butler | ナノ




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「やだ、どうしよう……!!」


○○○が慌てて起き上がり、ポケットに入れていたハンカチやエプロンで俺の濡れた腕やシャツをを拭いていく。

ハンカチ伝いに無防備に俺に触れる○○○の熱に心臓がうるさく騒ぎ出し、
しばらくされるがままに呆然としていた。


「……とりあえず…お前、怪我してないか…?」
「あ、わ、私は大丈夫です……っ……でもリュークさんがっ」
「大丈夫だよ、俺も怪我してない」
「良かった………あ、でも服が……早く着替えないと風邪ひいちゃう……!」
「あ、ああ…、後で着替えてくるから……気にするなって…」


いつもとは違って泣きそうな顔をしながら、必死に俺に構う姿に胸の奥が疼く。
ここでいつもならつい怒鳴ってしまう所だが、何故かそんな○○○の様子を見ていたら大丈夫だって早く安心させたくなって………



――――なんでだ…?



「っていうか、お前テラスの掃除してたんじゃなかったのか?……なんでこんな所に…」
「どうしても気になる汚れがあったから……水拭きしようと思ってモップと水を取りに行ってたんです…………やだ、リュークさん顔まで濡れてる…」


ここにいる経緯を説明しながら俺の顔を拭く○○○に、俺はただされるがままの状態で。
すると、ふと○○○の手が止まり、


「……………」
「……な、なんだよ、じっと見て」


○○○の視線を感じてそちらを見れば、
さっきまで泣きそうな顔をしていた○○○がふわっと笑う。


「ふふっ、リュークさん……かわいい…」
「なっ…!!お前っ……!!」


いきなり何を言い出すのかと思えば俺を見て「かわいい」とか。
何で男の俺が「かわいい」なんて言われなきゃならないんだ。


「だって、前髪………リュークさん綺麗にセットしてたのに崩れちゃって…」
「…ったく、誰のせいでこうなったと思ってんだよ」
「あ……ですよね………ごめんなさい…」
「あ、いや………だからもういいんだそれは…」


せっかく○○○の笑った顔を見れたと思ったらまた俺の一言でしゅんとなる。
そんなつもりで言ったんじゃなかったんだけど……



「…でも、」
「?」
「リュークさんの意外な一面を見れたような気がして………ちょっとラッキーかも」
「な、なにがラッキーだ……くそ、かっこわりー…」


乱れた髪型を隠すようにがしがしと頭を掻く。


「……かっこ悪くないですよ…?」
「……え?」
「今のリュークさんも……素敵です」


えへへ、と笑いながら。
向けられた笑顔に、言葉に、すっかり翻弄されてしまっている。



――俺は、コイツが、



○○○の事が、


好き、なのか…?




最初は単なるキース様に無礼を働いたやっかいな庶民の女でしかなかったのに。
いつの間にか、俺の中で○○○の存在がでかくなってきている。
○○○の笑った顔が見たかったり、悲しむ姿を見ると傍にいてやりたくなったり。
確実に俺の中で今までになかった感情を○○○に向けていて。




心の奥底で「いい加減自覚しろ」ともう一人の自分に言われているような気がしてきた――。





20120530
…………………………
お友達椿さんのイラストからお話を書かせて頂きました!
椿さんの描いた廊下でばったりな見習いとメイドちゃんとの恋。
もおぉぉぉぉぉ可愛いこのヤロ!!///と萌え滾って、速攻で椿さんに「書いてもいい?」ってお願いしたら快くOKしてくれました♪

自覚する手前のリュークという事で^^
椿さんありがとう!!
こんなリュークでよければ貰ってくださーい(´//`)
椿さんのサイトはコチラ→『彼の余白』

(12/23追記)
今月末を持ってサイトを閉鎖される椿さんに、このリューク話を書くきっかけとなったイラストを頂いてきました///
椿さん、どうもありがとうー!そしてサイト運営お疲れ様でした♪
これからも仲良くしてね☆




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