二人でお茶を飲みながら、穏やかな時間が流れる。
「ジャンさん、今日は本当にありがとうございました」
「いえ。私こそ、急に連れ回したりしてしまい…疲れていませんか?」
「全然…!本当に楽しかったです!」
好きだなんて…口にしたことなど、勿論ない。
だけど、本当に…。
本当に、本当に。
「特別な一日になりました…」
大好きな人と、過ごすことができた。
傍から見たら、ただの平日。
でも今日は、私にとって…。
「特別な日だったので、嬉しかったです」
一人でケーキを食べて終わる予定だった。
それが、蓋を開ければこんなにも幸せな一日が待っていた。
「では…」
「…?」
「その、特別な一日に、もう一つ“特別”にしていただきたいものがございます」
「もう一つ……?」
ふと見上げた先には、真剣な眼差しで私を見つめるジャンさん。
「はい。…よろしいでしょうか?」
スっと手を取られ、そのままジャンさんの頬に持っていかれる。
「…キミの“特別な日”に、デートがしたかったんだ」
「え……?」
真剣な眼差しは、少しばかり熱っぽさを孕んでいるように見える。
「あ、あの……?」
そのまま手を下ろすと、腕に華奢なブレスレットがつけられる。
「えっ…!?」
「“特別”の意味、わかるね?」
急に、敬語が抜けたジャンさんに、心臓が大きく跳ね上がる。
「あ…えっと……」
顔を真っ赤にして、しどろもどろになる私に、ふわりと感じる温もり。
「……!?」
気がつくと、ジャンさんの大きな腕の中にスッポリと収まっていた。
ジャンさんの吐息が、耳元を擽る。
「…誕生日おめでとう、紗良」
「あ…」
どうして私の誕生日を知っているのか―――それよりも、次の言葉で、頭の中が真っ白になった。
「紗良の“特別”に、俺自身も加えてくれないかな?」
どういう意味だろうか…?
そんな質問はきっと、愚問だ。
「……はい」
小さく返事をすれば、この意味はジャンさんが全身で教えてくれる。
「紗良…」
重なる想いは、二つの影も重ねる。
感じるのは、ジャンさんの甘い唇。
あなたの温もりを知る、誕生日の夜。
Happy birthday, dear sara♪
*END*
→管理人より♪
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