楽しかった時間は、あっという間に過ぎていく。

辺りは日が沈み、帰る人たちでごった返していた。




「はぁ…楽しかったです!」


「それはよかったです」


「でも、どうしてショッピングモールだったんですか?」




帰り道。

楽しかった一日を振り返りながら、疑問に思うことは、今日という一日の過ごし方。




「それは…秘密です」


「ふふっ、まだ秘密なんですか?」




結局、ジャンさんは何を買うワケでもなく、ただ私のウインドウショッピングに付き合ってくれただけだった。


どうして私を誘ったのだろうか?

そんな疑問が浮かぶけど、楽しかった一日を“楽しかった”で終わらせたい私は、これ以上突っ込んで聞くのをやめてしまった。




流れゆく景色は、いつしか見慣れた街並みへと戻る。




「あの…ジャンさんさえよかったら、お茶のんでいきませんか?」


「…よろしいのですか?」


「はい!今日のお礼…って言っても、本当にお茶くらいしか出せないんですけど」


「いえ、ありがたくいただきます」




ここで帰ってしまっては、次に会える時などわからない。

“楽しかった一日”をもう少し長く、長く。







「お邪魔いたします」


「どうぞ。狭くてすいません…」




ジャンさんを部屋へ案内し、お茶の支度をする。


特別来客用に、カップを備えているワケでもなかったので、私が愛用しているマグカップと色違いのモノにお茶を注いでジャンさんへ出す。



(なんか照れるなぁ…)



一人、にやけてしまう口元を隠しながら、お茶を口へと運んだ。






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