「わぁ…!可愛いっ!」
「紗良様はこういったものがお好きで?」
ジャンさんは、大型のショッピングモールへ案内してくれた。
「はいっ!でも、女の子なら誰でも好きそうですよ?」
「左様ですか…。何ぶん、他の女性とこういった会話をすることがなくて…。いやぁー、勉強不足でお恥ずかしい」
「え…?ジャンさん、モテそうなのに…」
「そんなことはありませんよ」
「あ、さっきから私ばかりアレコレ見ちゃってすいません…。ジャンさん、何か用事があるんですよね?」
「いえ、私は紗良様が楽しまれていたらそれが一番ですので」
何か用事があって、この場所へときたのかと思ったら、そういうワケでもなくて。
洋服やバッグ、アクセサリーと、アレコレ飾られているそれらに一つ一つ目を奪われてははしゃぐ私。
それを、一緒になってニコニコと眺めてくれる笑顔。
「いただきます!」
「いただきます」
「美味しい!」
「本当ですね。紗良様のお顔を見ながらですので、より一層美味しく感じます」
「も、もう…!またそうやってからかうんですから…!」
「ハハッ。大変失礼しました。でも、本音ですので」
「え…?」
「いえ。さぁ、早く食べないと冷めてしまいますよ」
施設内に入っているレストラン…勿論、私のような庶民が行くようなその場所で、向かい合っての食事。
「あの…さっきのアクセサリーのお店、もう一度見てもいいですか?」
「勿論です」
それら全てが、なんだか“デート”みたいで。
「紗良様、デザートはいかがなさいますか?」
「えーっと…チョコケーキが食べたいです!」
「かしこまりました。すいません…」
本当に“デート”みたいで。
店員さんを呼ぶ、その横顔を見つめては、幸せな吐息が零れ落ちた。
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