1月






《餅》 1/1-1/2
白い餅が様々な色を纏い並べられている様は何とも目に楽しい。目移りしながら摘んでいると、ふと余り馴染みの無いものが目に止まる。橙色の物が絡められているそれ。食べろと進められ口に含めば、途端に広がる強烈な磯の香り。それがホヤというものだとは後で知った話だった。 (紡主)

《おみくじ》 1/2-1/3
いくら倒しても減らない化け物に、どれだけ体力に自信があっても流石に息が上がる。これは自分の過信が招いたもの。貧乏籤を引いたのだとしても今更だ。今は信頼して殿を預けてくれた仲間達の為にもここを何としても生き延びなければ。誓いを胸に槍を握る手に力を込めた。 (デューカス)

《潤う》 1/3-1/4
必要なのは怒りと憎しみ。毒樹を切り倒し平和を齎す事それだけが生きる証で。それを失った時自分は生きる屍となった。感情も感覚も全てが他人事のようで。だが、傍で笑い話しかけてくる同志ではなく仲間という存在が、乾いた大地に染み入る水のように空虚な心の隙間を埋めた。 (ザヴィド)

《雪球》 1/4-1/5
音も色も全てを飲み込む白が肩へ髪へと降り積もり、己と世界の境界が曖昧になっていく。いっその事身を委ねてしまおうかと瞼を下ろす…。が、後頭部にぶつかる派手な打音と感じる冷たさ。振り返れば手を振る仲間達の姿が。まいったなぁ、まだ消えるわけにはいかないみたいだ。 (ゼフォン)

《翼》 1/5-1/6
飛べるようになりたかったですか?と、空を行く鳥たちを見る眼差しが何だか寂しそうで、思わず口を突いて出た言葉。「んーお空は楽しそうだけど、そしたらみんなと友達になれなかったかも知れないの。だからいいのー♪」にっこりと笑う彼女に、涙が溢れそうになった。 (イリア&メアメイ)

《故郷》 1/6-1/7
行ってきます、と笑顔で去って行く背中。その足取りに迷いはなく、瞳はまだ見ぬ世界への希望に輝いている。子供だって彼等は逞しく成長し未知の世界へと羽ばたいていくのだ。寂しいと思わなくもなかったが、嬉しさの方が大きかった。願わくは、彼等の道行きに光あらんことを。 (ハガル)

《おみやげ》 1/7-1/8
星は彼の手によって時間という越えられぬ壁に遮られて散り散りになり、最早彼を妨げとなるものは無い、筈だった。だが蓋を開けて見れば全ては悉く覆され修正も後手に回り。結果、彼の目論見は完全に潰されるのだ。原因を作った張本人は、それで良いのだと寂しげに笑った。 (ゼフォン)

《せせらぎ》 1/8-1/9
星の長と言われていても、歴史の流れの中からすれば小さく弱い存在で。存在すら無かった可能性とてあった。それが今や過去を変える手段を持っているのだ。だからこそ、忘れてはならない。この力は、誰かを助ける事も存在毎消滅させる事も出来る、諸刃の剣だという事実を。 (紡主)

《騒ぐ》 1/9-1/10
本当はこことは正反対の誰にも邪魔されない静かな場所が好きだった。でも、唐突に気付かされた。見知らぬ誰かの大切な場所を守る為、必死に戦っている人達がいる事を。赤の他人の幸せを守り、嬉しそうに笑う人がいる事を。知らなかった時には戻れない。戻りたいとも思わない。 (リュセリ)

同志達よ立ち上がれ、遂に時は満ちた。歓喜の美酒に酔いしれろ。何人たりとも我らが行く道を妨げる事なかれ。何があろうとも我等の歩みはただひたすら前へ。毒樹を切り倒す斧となり、人々の解放を。唯の一人となろうとも、崇高なる志を掲げた我等は諦めぬ。朱キ斧に栄光あれ。 (朱キ斧)

《祭りの後》 1/10-1/11
昨日までの賑やかさが嘘のように静まり返った砦内を歩くと、浮かんでくる日々の残滓。全てが終わり皆それぞれの場所へ帰って行った。再会の約束こそしたが、二度と会えない者もいたかも知れない。でも可能性がある限り、再会の日に胸を張れるよう生きていこうと思うのだ。 (トルワド)

《感傷》 1/11-1/12
行動に生じる迷い、湧き上がるのは自責の念。己の行いは本当に正しいのか、もっと良い方法は無かったのかと。そんな僕に軍師は言う、自問は悪い事ではない。だが迷いは仲間を危険に晒しかねないと。彼の言葉は、感情的では無いが故に深く自分の中に浸透し、芯を揺さぶるのだ。 (紡主&レギウス)

《隠す》 1/12-1/13
結界の外に広がる希望を目にした日から、本拠地内で時折交わされる戦い後の話。そんな時キミも仲間も笑顔を浮かべ、こちらに話を振る皆の目は本当に綺麗だと思ったんだ。そんな彼等にいつもの笑顔で相槌を返しながら『ボクはもういないけどね』という答えをそっと呑み込んだ。 (ゼフォン)

《弦》 1/13-1/14
弧を描くように飛んだ矢は、狙い違わず獲物へと吸い込まれる。詰めていた息を吐き持っていた弓を再び担ぐ。雪を踏みしめ辿り着いた先には既に息絶えた獣の姿が。リュセリは拳を胸に当てて目を閉じ祈る。己の都合で奪った命への謝罪と生きる糧となってくれる命への敬意を込めて。 (リュセリ)

《突撃》 1/14-1/15
両の足はしっかりと大地を踏みしめ迷いの無い眼差しは進むべき先を見据える。緊張で乾いた唇を湿らせ、僅かな震えを鎮める為剣を握る手に力を込めた。肺一杯に吸い込んだ空気は冷たく余計な熱を冷ますかのように。いざ行かん、勝利への道を。掲げた剣が真っ直ぐに天を貫いた。 (ハジマリ)

討つべきものを前に、これ以上無いほど緊張しているのが自分でも分かる。その証拠に武器を握る手は汗をかき、額もうっすらと湿っていた。身を屈め、息を潜め、気配を殺す。瞳には獲物を前にした猛禽類のような獰猛な光が宿っていて。舌なめずりをする男の腹が、僅かに鳴った。 (デューカス)

《協力》 1/15-1/16
手を取り合う事は可能でも、それは所詮一時的なもので。終わってしまえば繋いだ手は再び離れてしまった。何故と思うのは己が未熟だからなのか。でも間違っていないと思うのは集団ではなく個として理解しあえる仲間がいるから。そう思える事がどれ程幸せなのか知っているから。 (トルワド)

《美中年》 1/16-1/17
鎧に身を包んだ男が持っていた槍を地面に叩きつけると、重い一撃に地面は堪らず敵を巻き込んで爆ぜ、飛び出して来た筋骨隆々とした男の気合の篭った拳に敵は為す術も無く討ち倒されていく…「団長、私は必要ですか?」軍師の一言に問われた側はただ苦笑を浮かべるのだった。 (美中年組&紡主)

《かじかむ》 1/17-1/18
凍えた心は誰にも気づかれず、いつか脆く崩れ去るのでしょう。これは、身内の狂気に気付かず悲劇を止められなかった己に課せられた罰なのだから。知らなかったでは済まされない。笑う度誰かが耳元で囁く。許しを請う資格も忘れる資格も無いのだと。心が壊れるその時まで。 (イリア)

《振る》 1/18-1/19
夜も明けきらぬ内から砦の外へ向かう人影が。なるべく音を立てぬよう、気配を殺して門を潜る。数歩離れて振り向けば、静まり返る砦内にどうやら見付かってはいないようだと安堵の息を一つ。視線を戻した青年は、腰に佩いた剣を一撫で坂道を下って行く。 (紡主)

偶然見かけて追ってみれば、開けた場所に彼は居た。目を閉じていたかと思えば、数秒後一人黙々と剣を振るい始めた。毎日こうして鍛練していたのだと察せられ笑みが漏れる。未熟さを努力で埋めようとする姿には好感が持てて。隠れた位置に腰を下ろし、その様子を見守った。 (ゼフォン)

《立つ》 1/19-1/20
自分で自分を証明するにはどうしたら良いと思う?そんな意地悪な質問に返って来たのは分からない、の一言。何故かその答えに僅かな落胆を覚えた。でも「けど僕は君がゼフォンだって知ってる。それで良いんじゃないかな?」あっけらかんと笑う顔に、呆れと少しの安堵を抱いた。 (ゼフォン&紡主)

《蜜》 1/20-1/21
差し伸べられた手は驚く程冷たく、向けられる笑顔もまた貼り付けたようで温もりが無かった。貴方にとって、私は何なのでしょう。そんな問いかけにも明確な答えなど無くて。私の心は既に貴方に捧げてしまったから、離れる事は出来ない。まるで貴方という花の上で踊る蝶のように。 (レネアス)

どうしたら良かったのか。なんて、今更考えても仕方が無い。そう思いながらも考えずにはいられない。でも辿り着くのはいつも同じ結果でしかないのだろう。最初の時に力を求めていなければ、あるいは変えられたのだろうか。力、それはまるで甘い毒のように揮う者の心を狂わせる。 (ゼフォン)

《感動》 1/21-1/22
何の事は無い毎日が愛おしく感じる。それはキミ達と共に過ごす中で生まれた感情。否、永の時を過ごす内、知らぬ間に忘れていた心をキミ達が思い出させてくれたのかも知れない。お礼なんて言わないよ。ありがとうを贈る時はさよならも一緒だから…それが少し、寂しいと思うよ。 (ゼフォン)

何かが背筋を駆け上がる感覚に、身体がぶるりと震えた。今一つの戦いが終結し、漸く僕は還れる。柵に囚われる事無く本当の眠りにつけるんだ。この時をどんなに待ち望んだか。去り行く背中に贈るのは感謝の言葉。キミは魁を冠する星の長。そして何より希望そのものだったんだ。 (ゼフォン)

《拗ねる》 1/22-1/23
貴方には関係ない、咄嗟に出てしまった一言。聞こえた相手の瞳が悲しみに揺れ、でもすぐにごめんねと言って笑う。押し寄せる後悔に俯いた。謝るのはこちらの方だと言いたいのに、声が出て来ない。大丈夫、分かってるから。頭の上で響いた優しい声に、鼻の奥がつんと痛んだ。 (主リュセ)

《吹雪》 1/23-1/24
どうして。問いかけた声に応えは無く。伸ばした指は宙を掴んだ。何もかも嘘だったのですか?私は貴方の何なのですか?脳内を埋め尽くす疑問符の羅列。意味を無くした自分という存在。ああ寒い…呟く声は誰にも届かず、独り己の身を抱きしめたまま。 (イリア)

《もえる》 1/24-1/25
背筋を伸ばし、顔を上げ。誰に対しても真っ直ぐ。年の割にはしっかりした青年。でも何処か危うげに見えた。程なく知れたその理由。綺麗に隠していたみたいだけど、熾ように燻っているそれを抱えているのが見えた。でもそれで良いんだ。だってそれが生きてるって事でしょう? (ゼフォン&紡主)

《財布》 1/25-1/26
店先に飾られていたのは淡い色のドレスで。それは防御力もさることながら値段も今の防具の比ではない。欲しいとも言えず溜息を吐いて歩き出す。が、いくらもしない内に呼び止められ、振り向けば目の前にはドレスと笑顔が「似合うと思うんだ」どうしようもなく頬が熱い。 (主リュセ)

《素材》 1/26-1/27
重く鋭い一撃を受け、巨体がゆっくりと崩れ落ちる。暫くの痙攣の後、大きく息を吐き出したのを最後に動かなくなった。こちらの都合で奪った命。輝きを奪った武器を手に、その傍らに膝を付く。償いなどと傲慢な事は言わない。でもせめてその体、一片たりとも無駄にはしない。 (紡主)

《毛糸》 1/27-1/28
一つに纏められた後ろ髪が風に揺れる。彼が歩く度に揺れる。揺れる、揺れる。「あの…さ…」「気にしないで下さい」戸惑う団長に対し、軍師は眉一つ動かさずに言い切った。が、これが気にせずにいられようか。軍師(正確にはその後ろ髪)を狙う眼差しは、日に日に増えていた。 (レギウス&紡主&…)

《首》 1/28-1/29
折れてしまいそうな細く真っ白な項。偶然捉えてしまったそれに、一瞬にして意識を奪われた。きつく目を閉じて、込み上げる衝動をやり過ごす。離れていく気配にそっと瞼を上げれば、仲間達と楽しげに話す後姿が。傷付けたくなんてないのに…。ああでもこんなにも―君に触れたい― (主リュセ)

《手紙》 1/29-1/30
澄み渡る空気を吸い込めば、全身を巡るような感覚に口元には自然と笑みが浮かぶ。こんな時思い浮かぶのは分かたれた世界で同じように新たな世界の開拓をしているだろう彼等の事。二度と会う事は叶わないけど、それぞれ頑張っていると思うから―お元気ですか?僕達は元気です― (紡主)

見た事の無い獣や植物に毎日が驚きの連続。慣れない分苦労も多いが、そんな時には思い出す。率先して外に飛び出しているだろう彼と、執務漬けなっているだろう彼女の事を。各々がその役目を果たそうと頑張っている姿を。―皆元気だろうか?お互い身体にだけは気をつけような― (トルワド)

休む事無く目を酷使した所為か、流石に疲れが出てきた。前例の無い事態に報告書の数は日増しに増えている。少し目を休めようと執務室の窓から見上げた青に、ふと彼等を想う。血縁だからなのか、よく似た二人の英雄を。―皆さん息災でしょうか?余り無茶をしてはいけませんよ― (アストリッド)

《さかさま》 1/30-1/31
箱庭の維持を願う彼と、そこからの開放を願うキミ。人に知識や思考は必要無いとする彼と、自ら考えて動き、戦うと決めたキミ。まるで、コインの表と裏みたいなキミ達。でもその根底にあったのは人を、世界を守ろうとする意志。ボクは知ってる、それだけは同じだったって。 (ゼフォン)










(10/13)
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