7月



《遊び》 7/1-7/2
最初はちょっとした悪戯心。別に姉貴を傷付けようとか泣かせようとか思ったわけじゃ無くて、冗談のつもりだったんだ。でも、本気で心配する姉貴を前に言い訳は舌先で凍り付き。俺の首元に縋り付いて泣く姉貴が、震える声で何度も俺の名前を呼ぶ声だけが辺りに響く。謝る声は嗚咽に掻き消された。 (ジーノ&ミュラ)

《本》7/2-7/3
余計な知識は必要ないと、世の中から取り上げた書物。厖大な量の紙の束を前に、彼は一人佇んでいた。傍らにあった本を拾い、何の気なしに捲っていた手が唐突に止まる。そこには嘗ての世界の姿が。無理矢理視線を引き剥がし、未練を断ち切るように本を閉じる。目の前の山に本を投じ、彼は踵を返した。 (レネフェリアス)

《一緒》 7/3-7/4
彼は独りになってしまった。世界がまだ穏やかな時を刻んでいた時は、憂う事の無い時を過ごしていたのに。あの日から随分時は流れたが、あの光景は今でも消える事なく胸の内にあって。そしてまたそんな時を共に過ごしたいと思うから、ボクは可能性を信じて何度も苗を植えるんだ。 (ゼフォン)

《感謝》 7/4-7/5
声にする事は許されない。だって勘のいいキミはそれだけで何かを察してしまうと思うから。ボクの気持ちを知られる訳にはいかないから。でもキミの存在が、その行動がボクと彼の救いになっているのは本当だから。ボクは本気で君の力になるって、なりたいって思っているんだよ。 (ゼフォン)

《両手》 7/5-7/6
誰のものとも知れぬ程大量に浴びた血で赤黒く染まった両の手を見下ろす眼差しは、どこか空虚であった。守るとは、殺すとは何なのだろう。脳裏を占める疑問符は明確な答えも導き出せぬまま、袋小路から抜け出す術もなく増えるだけで。それでも今これを手放す選択肢は無いのだ。 (紡主)

《七夕》 7/6-7/7
夜空を彩る星々に幾度となく願ったそれを手放したのは、いくら願った所で変えられぬものもあると知ってから。どんなに祈っても家族との平穏は得られなかった。でも、あれ以来目を背けていた星空を久方ぶりに見上げながら、そっと送った祈り。吐息に乗せて紡ぐのは仲間達を想う心。 (イリア)

《叶える》 7/7-7/8
下らないと吐き捨てながら、それでも願わずにはいられない。神様なんて信じていないけど、この願いを叶えてくれるなら命を捧げるのも厭わない。でも、本当は知っている。真に願いを叶えたいのならどうするべきか。ただひたすらに己の想いを胸に突き進むしかないって事を。 (ゼフォン)

《仕事》 7/8-7/9
疲れていても、決して笑顔を絶やさずに。帰って来た者達に癒しと安らぎを与える事が己のたった一つの使命なのだから。門の外が騒がしくなってきた。きっともうすぐ腹を空かせた連中がここになだれ込んでくるだろうさ。さあ、気合を入れて戦うよ!ここはあたし達の戦場だからね! (ルルサ)

《はしる》 7/9-7/10
時代の流れに逆らうように、過去に飛び歴史を改竄しては未来を変える。それは行為だけで見れば非常に後ろ向きな、だが真実誰もが為せなかった事で。彼等の姿は先の世にどう語り継がれていくのだろうか。それは夜空を走る一条の光のように、時代を駆けた英雄達の物語。 (詠み人知らず)

《とまる》 7/10-7/11
停滞した箱庭にこそ自由があり、平和があり、幸福がある。それは流れた故に壊れた世界を知っている先駆者達からの教訓。だが、正にその当事者である彼はそれを善しとはせず。人の手による滅びならそれが運命なのだと主張した彼は、だがその人に希望を託していたのだった。 (ゼフォン)

《瞳》 7/11-7/12
一瞬の油断が招いた状況は、だが危機を察して飛び込んできた彼のお陰で事なきを得た。が、戦いが終わり本拠地への帰路についている間もある事柄が脳裏にこびり付いて離れない。それは彼が敵に向けた眼差し、そこに浮かんだ痛みを含んだ色。彼の、命を奪う行為に対する思いを。 (リュセリ)

《未来》 7/12-7/13
キミ達の抱く光が一層の輝きを増したのは、未来への希望を見出したからなのだろう。そんなキミ達を見ていると何だかボクも嬉しくなって。全てが終わったら、僕は漸く眠りにつける。それは僕自身が願った事。なのに―こんなに強く、その先を見てみたいと思ったのは初めてだよ― (ゼフォン)

《過去》 7/13-7/14
時代樹の幹を撫でながら、この樹の理を覆す方法が無いかと模索してしまう。自由に巡る時代を選べる可能性は、本当に無いのだろうかと。無駄と知りながらも考えずにはいられない。不意に視線を感じて振り返れば、感情のない眼差しとぶつかる。何故か咎められたような気がした。 (紡主&ゼフォン)

《流れる》 7/14-7/15
ボクは自分が抱く願いを叶える為、この状況を利用している。だから感謝される謂れは無い。それなのに、キミはボクのお蔭だなんて的の外れた事を言って笑っている…。願いを叶えるのが最優先なのは変わらないけど、そんなに言うなら仕方ないから一緒に戦ってあげても良いよ。 (ゼフォン&紡主)

《罪》 7/15-7/16
負うべき罰は受けよう。それでも立ち止まりはしないのだから。どんな困難が待ち受けようとも我が信念は揺るぎはしない。我等が目指す理想の世界を体現する為ならば、立ちはだかる者は全力で退け、喜んでこの手を血で染めよう。それこそが、かの地へ至る力となっているのだから。 (ザヴィド)

《後悔》 7/16-7/17
彼が行ってからどれだけ経ったのだろう。この身では季節の移ろいを肌で感じる事も無い。ただ既に出来上がったパズルを組み立てるかのように一つ一つ綻びの無いよう確かめながら世界の理を造り上げていくだけの毎日。唐突に気付いた。彼こそが自分にとって自由そのものだったと。 (レネフェリアス)

《祝う》 7/17-7/18
何もかもが上手くいくなら、どんな犠牲を払っても心は痛まない。でもね、だからと言ってキミ達の幸せを願っていない訳じゃないんだよ?本当はもうキミ達とは違う何かに成り果ててているのかも知れない。それでもこうして笑い合える事が幸せだと感じる心はまだ残っているから。 (ゼフォン)

《渇く》 7/18-7/19
あの日手離した筈のものを、それでも諦めきれないのは愚かだからだろうか。もう二度と触れる事すらないと知りながら、それでも生きる事を選んだのは自分。私は何かを残す事が出来たのだろうか。世界はもうすぐ私という鎖から解き放たれる。その時こそ、最後の審判が下される。 (レネフェリアス)

《金色》 7/19-7/20
ふわりと視界を掠めた色に、男は意識を引かれて視線を向けた。そこにいたのは己を唯一というかの女性が。太陽を内包しているかのような眩しいその姿に思わず目を逸らせば、視界に入るのはせせらぎを模したかのような限りなく薄い青。月よりも尚儚いその姿に浮かんだのは自嘲の笑み。 (レネフェリアス)

《桃色》 7/20-7/21
視界を埋め尽くさんばかりに降り注ぐ花びらの嵐に、少女はうっとりと目を細めた。邪魔になると知りながら何だか面白くなくて、わざと足音を立てて隣に行けば、彼女はすぐにこちらを向いた。途端、心臓が音を立てて跳ねる。彼女の頬を染める色は薄紅の花びらよりも尚淡く、そして綺麗だった。 (紡主→リュセリ)

《髪》 7/21-7/22
何かが絶ち切れる音と視界に入る髪。どうやら紐が切れてしまったようだ。さてどうしようかと眉を寄せる。と、髪を引かれ後ろを向けば幼なじみと目が合った。こちらが何か言う前に前を見ろと促され大人しく従っていると、耳元を掠める指の感触。久しぶりのそれに、自然と口元が緩むのを感じた。 (紡主)

《のこす》 7/22-7/23
悪戯っぽく笑って茶化してみても、聡いキミは誤魔化されてはくれないだろうか。でもダメなんだ。未来の話をされても、ボクはそこには行けないから。だからせめて、キミ達が憂いなく未来へ進んで行けるように、ボクは己の全てをかけて最後の大芝居を打たなくちゃ。大丈夫、それがボクの幸せなんだから。 (ゼフォン)

《絆》 7/23-7/24
新しい世界へと旅立つ前にやって来たのは母親の眠る場所。捧げたのは故郷に咲く色とりどりの花々。貴女が望んだ平和を取り戻す事が出来たのは、貴女が最初に一石を投じてくれたから。でも叶う事なら生きて共に在りたかった。ポツリと落ちた本音は風に消え、代わりに己を呼ぶ母の声が聞こえた気がした。 (紡主)

《自分》 7/24-7/25
闇の中に身を沈め、命ぜられるままただ淡々と『仕事』をこなす。個を持たぬ者達は息をしているだけの人形のように。それが正しく全てだった。だが、あの日生まれた欲求は、塗り固められた殻を破り己という『個』が生まれた。そして今自分の主と仰ぐ少年が呼ぶのは、久しく忘れてしまっていた己の名。 (レギウス)

《やさしい》 7/25-7/26
箱庭は貴方を縛る鎖となった。貴方はそれすら利用して全てを掌握し、歴史を操り続けた。己も貴方にとっては無数にある駒の一つでしかないのでしょう。個として世界を知り、気付きました。貴方こそが、この世界を閉じ込める檻であったと。それでも尚この場に在るのは、同時に貴方が誰よりもこの世界を憂いていると知ったからでしょう。 (ルガト・ルガム)

《奪う》 7/26-7/27
頭上に輝く太陽のように笑う人。その周りには彼を慕い、集った仲間達。目を背けてしまいたくなるような眩しい光景。本当はここにいる筈のない自分。もしかしたらあそこに居たかも知れない人。すれ違い、歪んでしまった道。何もかも遅いのに、どうしても希望を捨てられない。もう一度、彼が心から笑える日が来ればいい。 (ゼフォン)

《秘める》 7/27-7/28
有り難う、ごめんなさい。おやすみなさい、さようなら。これからも宜しくと、誤魔化しながら心に浮かんだ言葉達。本当の事は教えられない。優しい君は少なからず悩むから。それは本意ではないから。でも、そう思ってくれる。それだけでボクは救われているんだよ。 (ゼフォン)

《気配》 7/28-7/29
じっと息を殺してこちらを窺う敵の存在背後に感じながら、剣を握る手に力を込める。決して焦ってはいけない。どんな苦境に立たされようとも諦めなければ勝機はある。己の腕を過信してはならない。その驕りは自身を窮地へと誘うだろう。失ってはならない人の心を抱き、少年は強く地を蹴った。 (紡主)

《気づく》 7/29-7/30
いつから、なんてそんな事は分からない。人として消えることすら叶わない生き人形と化した己の胸に咲いた、一輪の花。可憐とは程遠いかの人。どうして今更、そう思ってもその花は消える事なく咲き続ける。せめて今だけでも同じものとして在りたい。いつもの笑みが哀しみに歪む。 (ゼフォン→ミュラ)

《休息》 7/30-7/31
時代樹の枝葉から零れる日差しの暖かな温もりを感じながら周囲に目をやれば、戦時下だというのにのんびりとした光景が目に止まる。ふと脳裏に浮かぶのは、此処とは比べようも無く冷たい場所にあり、誰よりも人を愛する彼の姿。心から願う、せめてこの温もりが彼の元にもあるように、と。 (ゼフォン)

《勝算》 7/31-8/1
未熟な青年は僅かな時を経て一人前の剣士となった。だが、その成長を誰よりも楽しみにしていた彼女はもういない。敵となり立ちはだかる己の前に立つ青年。重なる影に胸を過ぎるのは嘗ての懐かしい思いと刺すような痛みを伴った哀しみ。阻む等最初から無理なのだと痛切に感じた。 (ロシェル)









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