蓮咲う日常 | ナノ


 船の恨みを晴らしてやんよ

確認できた敵は残り3人。爆豪くんがトドメをさした敵の一人は、今は地下ボイラー室へ留置中。仲間について口を割らずにだんまりらしい。


A組全員が揃うと、机に大きく島の地図を広げて、昼間に会敵し戦闘した情報を皆で提供しあった。

作戦隊長となった緑谷くんは、キリッとしてキラキラして見える。水を得た魚。そんな表現がよく似合っている。

彼の頭の中では今、敵の情報が、1-A皆の状態と特性が、島の地理が──勝つための戦術へと構築されている。


「──個性を奪われるから、接近戦はなるべく避けよう。分断は青山くんのレーザー、それから、消耗している八百万さんにお願いする。これが第一段階」


この島には、朝夕だけ潮が引いて地続きになる小島がある。かつて歴史的な城があったらしいそこへ籠城して敵を誘き出し、先制攻撃で敵を分断する、ということらしい。

各個撃破、妥当だ。

しかし……
爆豪くんがちょいちょい、緑谷くんの言葉尻を物騒な感じに引き継いでくんの、すんごい気になる……みんななんにも反応しないな。慣れって怖い。


「分断後は、狼顔の男は滝の方へ誘導。足場を奪う。
広範囲攻撃をしてくる赤髪は地下鍾乳洞へ。閉じ込めて被害を抑える」

「水場なら私ね」
「うん。それから、一度戦った轟くんと飯田くん」
「俺も行く。じっとしてらんねえ。本丸が近接ダメなら、俺はここが向いてると思う」
「OK、よろしく、切島くん」


「地下空間ならば、俺が行こう」
「私も得意かも! 鍾乳石落としたりしてさ!」
「あ、……私も三奈氏と同じ感じで役に立てると思います」

便乗して提案すると緑谷くんが頷いた。

……よっしゃァ……これで船の恨みを晴らせる。
漁師のおいちゃんたち、私、しっかりカタキをとってきます。


「島民の皆は城跡の地下洞窟に避難してもらおう。後ろは断崖絶壁だ。もしもの時の脱出経路を確保しておく。偵察のできる葉隠さん、脱出サポート兼、敵対処に砂糖くん、口田くんを配置する」

「残りは全員、活真くんと真幌ちゃんの護衛。活真くんを狙う敵に当たる。波状攻撃で、敵に個性を使わせることで消耗戦を強いる。その攻撃で敵を倒せればそれでよし。倒せなくても、救援がくるまで持ちこたえれば……」


すごいな。なんとかなりそう。……いや、なんとかしなければ。この場合の"負け"は、大怪我や再起不能……最悪、死に繋がる。そういう、世界だ。ヒーローになるって。

そればかりか、もしも私たちが負けて複数個性持ちのえげつない敵が、活真くんの活性回復能力を手に入れてしまったら。そうしたらきっと被害はこの島に留まらない。私たちで、やつらを止めなくちゃならない──

私は皆みたいに、最初から望んでヒーロー科に入った訳じゃない。だけど。


「泥梨、大丈夫? ……怖い?」

緊張が顔に出てしまったんだろうか。三奈氏が気遣うように、私を覗き込んだ。

「……ん……、恐怖っていうのは、予測能力の母なんでは、って最近思うようになりました。怖いと感じたら、怖くなくなるための最善の対処を……それだけを考えて、答えを実行できるように頑張ります。大丈夫、です。やってやります」

「ん? 分かったような分からんような……でもイイね、良い表情してる!」

ニッコリ笑った三奈氏に引っ張られるように、私も素直に口角が上がった。対して、クールな面持ちの常闇くんが私たちに歩み寄る。

「よろしくな、二人とも」
「鍾乳洞組ふぁいっおーー!!」

力強い目。信頼してもらえてる気がするのは、多分気のせいじゃない。頑張ろう。力の限り、ううん、プルトラ精神で。



「あ、そういえば本番、着ぐるみと生身どっちが良いでしょう……防御を取るか浄化攻撃を取るか……」

「うーん、泥梨って生身だといつもちょっと光ってるから、地下の暗闇だと目立って狙われやすくなるんじゃない?」

「そうそう、泥梨さん、常闇くんが過度に暴走しちゃったときの抑えになるかなぁって思ったんだ。個性強めて、フラーッシュ!!とかできたりする?」


緑谷くん、私はピカチュウでも富竹でもないんですよ?
って────ん?


「え、……光ってます……?」

「!? ええ、気づいてなかったの!? 自分からは分かんないんだ? 今まで言われたことなかった?」

「え、あーー……」

業界人の方々や共演者さんから、今日も輝いてるね! とか言われたことは、あるけど……

「なんか、オーラ的なことをお世辞で言われてるんだと思ってました。物理的に、光ってるんですね……」

個性垂れ流しちゃってるのと関係してんのかなあ。
じゃあ明日はヤンバルクイナさんだな。安心要素増える〜〜〜


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