育成計画 | ナノ


 lesson.3 うんてい

″子供の運動神経を鍛えるには握力を伸ばせ″
という一説があるのを御存知だろうか。

雲梯でぶら下がりつつ、次の梯へと渡っていく動作は非常に脳と身体に良いらしい。


まずはぶら下がるのに慣れてからだな、ということで雲梯に誰が最後までぶら下がってられるか選手権開催。

猿の名残なのか知らないが、無くて困らないので鍛えておく。


しかしちょっとまて俺…ニトロの手汗ですげぇ滑る!?
きつッッ!!

くそおおおお負けっかああああ
SASUKEだ!SASUKEだと思えぇぇぇ


気合いと少ない筋力でなんとか最後に落ちた。
やべぇ手ェぷるっぷるしてる…



いずくがいちばんおちるの早かったなー

もっかいやろーぜかっちゃん!りべんじだ!



ま、まじでか。マメ出来んぞおまえら…
子供って何回も同じことやりたがるよな…

しかし理由をつけて断るのも癪なので、プルプルな手を振り回してほぐしてからまた開始。


結局全部で3回やってマメができた。
まぁ…このメニューは…週1ぐらいかな…



かっちゃんはやっぱすげーな!

ぜったいいちばんさいごだもんなー

なんでそんなにぶらさがってられんの?

「負けたくねーからに決まってんだろ」



でもマメ破れたらクソ滲みて痛ぇから次にやんのはまた今度な、と付け加える。


思ったより難航するかもな…
もっと早く取り組むべきだったか。



ぴたりと足を止め、手をじぃっと見て俯くいずくを振り返る。


「どーした、マメか?」


覗きこむと、赤くなってはいるがマメのない手。
なのに悲しそうな寂しそうな顔。


「なんだよ?」


「…ぼく…かっちゃんみたいになれない…」


あ?あー…挫折感か…?


「おまえら先に他の遊びしてろ
俺はこいつをとくべつメニューできたえなおす!」


笑いと囃し立てる声を背に、着いてこい、と手を握って歩き出した。

皆のあまり来ない、建物の陰までひっぱる。
まぁ座れや、と促すと隣におずおずと座った。


「で?なんだって?」

「うう……
かっちゃんはなんでもいちばんで…なんでもできるけど…
ぼく…ぜんぜんできない…」


「それで?」


「それで…?」


泣き出しそうな悲しげな顔のまま俺をみる。その先を促されると思っていなかったんだろう。


「それで、お前はどう思ったんだよ?」


「かなしい…」

ぽろりと涙が出た。


「見りゃわかる。ほかは?」


「ほか…?手、いたかった…」


「俺もいてーわ、見ろこのマメを」


ずい、と手を差し出す。


「うん…さっき手つないだときにいたそうっておもった…」


「なんで悲しいかわかるか?」


「?かっちゃんみたいになれないから?」


「なれないから悲しいのか?
できない自分にくやしいんじゃねーのか?」


「くやしい…?」


「もっとこうなれたらいいのにって思わねーのか」


「おもうよぉ……ずっとおもってる…
かっちゃんみたいに、なりたい…」


あっこれ普通に照れるな。

ぼろぼろ泣き出した出久を見て、やっぱり虐めるとかできないな、と再認識した。

弟分みたいな存在。
ちょっとブラコンの域に入りそうだ…


「俺がなんで、なんでも一番になれるか教えてやろーか」

「!うん」


「あきらめねーからだ。

負けたくねぇ、なんでも勝ちたいっていつも思ってるからだ。
俺みたいになりてーなら、お前もそうなれ。」


ハッとした顔で俺を見る。


「それでも、できなかったら…?」


言葉はきっと届いただろうが、まだ不安な表情。


『ナンセンス界で追随を許さない』ってのはこの年頃の劣等感から育ってたのか…

もう少し短期で目標クリアできるようにして自信つけさせた方がいいか…?
それで調子に乗ったらムカつくが…


「すぐできなくてもいい。
できるようになるために鍛えてやってんだろ。
まずはこの手、マメだらけにしたる!」


こちょこちょと手のひらをくすぐるとあははははやめてよー!と逃げていった。


「…かっちゃんすごくやさしくなったね…」


追い付いて横に並ぶと、涙を手でごしごし拭いながら言われた言葉にちょっとギクリとした。

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