カカシ先輩と梅雨籠のおまけ 


●梅雨籠おまけ




「テンゾウ、シャワーありがとう」

声がして顔をあげると、湯上がりのナズナが部屋に戻ってきたところだった。
まだ濡れた髪をタオルで拭きながらこっちへきて、オレと目が合うとにこりと微笑んだ。

その上気した頬から目が離せなくなって。

さっきまでのラフな部屋着もかわいらしかったけれど、寝るときはパジャマなんだな、とか、薄いピンクの花柄が似合っているなぁ、とか。

一瞬で色んな事が頭をよぎり、今すぐ抱き締めたいくらいかわいい、という結論に達して、自分を慕ってくれている後輩に不埒な感情を抱いてしまった自分が疚しくて、慌てて目を逸らした。


「あはは、子供っぽすぎますかね…」
「いや、似合ってるよ」

お世辞でも何でも無くて、似合いすぎるくらい似合っていると思った。
任務の時はきりっとしている頼りになる後輩だけれど、普段はどこかほのぼのしている彼女の雰囲気に、そのパジャマはとても似合っていて。いつもは上手く回る口が、どうしてか辿々しくなり、火照った顔を見られないように目を背けてしまった。

「先輩…嘘が下手ですね」

沈んだ声にドキリとする。

「……何で嘘だと思うの」
「だって目もあわせてくれないじゃないですか…そんなに見苦しいですか!?」

慌ててナズナを見ると、目が潤んでいた。
その表情も全部……オレの中の何かを、かき立てられてられてしまうのだけれど、多分彼女にそんな意図は全くないはずだ。

「違うよ。見苦しいわけないだろ」
「じゃ、何で……」
「かわいいから、直視できないんだよ……」
「へ!?」

これ以上会話を続けるとぼろが出そうで、……どういうわけか彼女といると自分はいつもより、感情の振れ幅が大きくなるような気がしている。そんな自分に戸惑いながら……けれど、決していやな感覚では無くて……歯を磨くと言って逃げるようにナズナに背中を向けた。




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