夢 | ナノ
4


今夜もまた、テンゾウと酒酒屋で飲んでいる。

「それじゃもう、晴先輩とこんな風に二人では飲めなくなりますね」
「どうして……?」
「男女二人で飲むのを許すタイプじゃないでしょう、あの人は」
「そう…かな」

カカシは嫉妬するタイプだろうか。確かにテンゾウと仲が良すぎる、とは言われたけれど。

「この前の夜だって大変だったんですから」

晴先輩は酔っ払ってたから覚えて無いんでしょうけどね、とテンゾウが何だか疲れた顔をしている。

「まぁそれにしても、お二人がようやくくっついてくれてほっとしました」
「テンゾウもしかして……カカシの気持ちも知ってたの?」

テンゾウは黙って笑うだけだったけれど、沈黙は肯定と一緒だった。

「何だぁ……知ってたならさ、もうちょっと気を利かせてくれても…」
「何言ってるんですか。早く告白でもしてみたらいいでしょ、って何度も言ったでしょう?」
「……確かに言ってたけど」

テンゾウは腕組みしながら、「本当に…似たもの同士ですよね」と言って、嬉しそうに笑った。それが本当に、芯から嬉しそうだったので。

「どうしてそんなに嬉しそうに笑ってくれるの?」
私が尋ねるとテンゾウは、
「ボクはどちらの先輩も大好きなので」と屈託なく笑った。

「……テンゾウ、大好き!」
「晴先輩、もう少し声の大きさを落として貰えますか。……もう遅いか」

顔を強張らせるテンゾウを不思議に思っていると、「晴。どういう事?」背後で愛しい人の声がした。振り向くと、カカシはごく穏やかな顔で笑っていた。ぴりぴりとした殺気をまき散らしながら。

「か、カカシ……違うの。ね、」

同意を得るべくテンゾウに向き直ると、もうそこには誰も座って居なかった。ただ空の盃が残されているのみである。なんという逃げ足の速さだ。

「詳しくは部屋で聞かせて貰おうか。それと、お前暫く禁酒ね」

有無を言わさぬ笑顔に、私はただ頷くしか無かった。



end.



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