今夜もまた、テンゾウと酒酒屋で飲んでいる。 「それじゃもう、晴先輩とこんな風に二人では飲めなくなりますね」 「どうして……?」 「男女二人で飲むのを許すタイプじゃないでしょう、あの人は」 「そう…かな」 カカシは嫉妬するタイプだろうか。確かにテンゾウと仲が良すぎる、とは言われたけれど。 「この前の夜だって大変だったんですから」 晴先輩は酔っ払ってたから覚えて無いんでしょうけどね、とテンゾウが何だか疲れた顔をしている。 「まぁそれにしても、お二人がようやくくっついてくれてほっとしました」 「テンゾウもしかして……カカシの気持ちも知ってたの?」 テンゾウは黙って笑うだけだったけれど、沈黙は肯定と一緒だった。 「何だぁ……知ってたならさ、もうちょっと気を利かせてくれても…」 「何言ってるんですか。早く告白でもしてみたらいいでしょ、って何度も言ったでしょう?」 「……確かに言ってたけど」 テンゾウは腕組みしながら、「本当に…似たもの同士ですよね」と言って、嬉しそうに笑った。それが本当に、芯から嬉しそうだったので。 「どうしてそんなに嬉しそうに笑ってくれるの?」 私が尋ねるとテンゾウは、 「ボクはどちらの先輩も大好きなので」と屈託なく笑った。 「……テンゾウ、大好き!」 「晴先輩、もう少し声の大きさを落として貰えますか。……もう遅いか」 顔を強張らせるテンゾウを不思議に思っていると、「晴。どういう事?」背後で愛しい人の声がした。振り向くと、カカシはごく穏やかな顔で笑っていた。ぴりぴりとした殺気をまき散らしながら。 「か、カカシ……違うの。ね、」 同意を得るべくテンゾウに向き直ると、もうそこには誰も座って居なかった。ただ空の盃が残されているのみである。なんという逃げ足の速さだ。 「詳しくは部屋で聞かせて貰おうか。それと、お前暫く禁酒ね」 有無を言わさぬ笑顔に、私はただ頷くしか無かった。 end. |