□振り返る




カーティスは街中をゆっくり歩きながら、先ほどぶつかった相手のことを思い出していた。
黒い独特に服装、胸に光る十字架の装飾。

あれは間違いなくエクソシストだった。


「…まだまだ子供じゃない」


幼さの残る容姿にをしていた。あれはどう見てもまだ十代。そんな子供が神の代行人だと詠う黒の教団に属しているのか。
…なんて哀れなことだろう。

黒の教団など、所詮は幻影でしかない組織。

ただ戦うことだけに呼び込まれた聖職者。

伯爵が作るアクマを破壊し、ノアと敵対する存在。

そんなの、聖職者とは言わない。
ただの兵隊と変わらない。

その兵隊を子供がしている。
黒の教団も堕ちたものだ。

しかし、黒の教団となれば、子供だろうがなんだろうが容赦はしない。


黒の教団、エクソシストと戦うのがノアの一族。
エクソシストを見て殺人衝動が起きるのは、ノアの性。
偽りの神に選ばれた者と、本物の神に選ばれた一族。
互いに相容れぬ存在同士。
昔からそうだった。だから今も、同じだ。


…ただし、それは正常なノアに限る。


カーティスはまだメモリーに半覚醒。他のノアと比べると、少し殺人衝動は弱い。

だから先ほどぶつかったのがエクソシストにもかかわらず、何の衝動も起こらなかった。


「まぁ、殺れって言うならできるけど、ね」


今のカーティスは、嫌悪感は抱いても殺人衝動は少ない。
ノアとして、そういった感覚がないのは危ないと家族は口を揃えて言う。
だから一人で出歩くなといわれたり、戦いに行くなといわれたりする。

でもそれじゃあ、自分が居る意味がない。

出来ることなら誰かの役に立ちたい。
そう思う。
だから早くメモリーも目覚めてほしいのに、そんな兆候全くといって言いほど皆無で、周りに負担ばかりかけている。

力を使えば七日は普通の人間みたいになってしまうし、エクソシストに対する嫌悪感すら薄れてしまう。

だから危ないと言われるんだ。


こんな特殊はいらない。
そう思うのに。
役に立てるならいくらでも手を汚すのに。

殺人衝動は起こらない。
力が無くなっているときは特にそうだ。
今のだって、絶好のチャンスだったのに見逃してしまった。


「…はぁ…」


やっぱり、街なんかに出てくるんじゃなかった。

ノアの力も使えずこんな所にいたら、人間と変わらないじゃない。

…まぁ、人間は嫌いじゃないけど。
なんてね。



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