□早い鼓動















「残念ながら、スカですネ☆確かに強い気のイノセンスですガ」

『…そっか。ごめんなさい、千年公。スカばっかりで…』


イノセンスを破壊しながらそう言う千年公。
持ち主のいないイノセンスは儚く散って消えていった。


「気にしなくていいんデスヨ☆イノセンスはスカでも、エクソシストとイノセンス両方を削除出来たんですカラ∨」


いい子いい子、とカーティスの頭を撫で、削除できただけでも儲けものだと伯爵は言った。


「能力を使って疲れたでショウ?ゆっくり休むといいデスヨ∨」

『千年公…』


カーティスはじっと見つめて何も言わなかった。
伯爵はふぅ、と息を吐いてカーティスに言う。


「言いたいことは分かってまス♪だから気にしないでいいと言ったんですヨ∨」

『…ごめんなさい…』


小さな子供が悪い事をして謝るように、カーティスは小さく呟いた。
そんなカーティスをみて千年伯爵は、目の前にいる子の目を見る。


「能力が使えない7日間、ゆっくり過ごすのもいいでショウv
暇であれば町に下りてみてはどうデス♪?」

『町に…?』

「幸い、今はティキぽんも双子もお仕事行って居ませン♪ロードは学校行ってますカラ」


少し羽を伸ばしに出掛けるのも良いでしょウ。





*****



『…つまらない…』


カーティスは町へ出掛けていた。
いつも隣にいるアルは仕事をしていて、今はいない。

ロードや双子、ティキもいない。


『…やっぱり、つまらない…』


屋敷に戻ろううと踵を返したそのとき、曲がり角から走って来た人と思い切りぶつかった。


『いっ…!』

「いたたたた…っ!す、すみません怪我は!?」


その人は砂埃を叩きながら手をさしのべた。


「不注意とはいえ、すみません!」

『………』


手を取って立ち上がると、相手の顔が見える。


「あの…?」


キョトンとこちらを見ている少年。
そんなに見つめていたのだろうか。


『あ、いいえ平気。大丈夫です』

「よかった」


とりあえず一度視線を外し、もう一度少年に視線を向けた。

目が合い、顔をほころばせて安堵する少年。


「ぶつかってしまってすみませんでした。僕急ぎますんで失礼します!」


少年は頭を深く下げると走り去って行った。

風が髪をなぞる。
後ろ姿は遠くなって行った。


『…顔に傷…』



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