□無残、無惨














昼間なのに薄暗い。

天井からは水滴が落ちてくる。


『こんな所にあるのかな…イノセンス』


足音がこだまする洞窟。

音が響いていくのがはっきりと聞こえてくる。
ということは結構深いところまで来ているのか。
ランプを照らしながら、道を先導するのはアル。


「すみません、カーティス様をこんな所に連れて来てしまって」

『いいよ気にしないで。アクマが触れないイノセンスならノアが行くしかないからね』


偶然見付けたイノセンス。

それをアクマに取って来させようと出した所、アクマはイノセンスの気に当てられ蒸発してしまった。

そんなに強い気を持つとも知らず何体ものアクマを飛ばしてしまった。


『(…ごめんね…)』


イノセンスの気に当てられて辛かったでしょう。

ごめんね…。

今回のイノセンスはエクソシストが嗅ぎ付ける前に見つけたもの。
エクソシストがいないなら、このイノセンスを持ち帰るのはたやすい。


「カーティス様、ここです」

『うん』


壁に埋まり奥の方で光を放っていたイノセンス。
光が強く、イノセンスの気も普通とは確かに違う。

アクマがこのイノセンスの気に当てられて消えてしまったのも仕方ない。


『早く持って帰ろう』


ここに置いておけばきっとエクソシストがやってくるはず。
そうなる前に早く出なくては。


『急ごう。嫌な予感がする』

「はい」


イノセンスを手に、カーティス達は踵を返した。






「待て」

「!」


前を見ると、そこには一人の人間が入口側に立っていた。
黒ずくめの男。一瞬でエクソシストだと分かった。


「それは置いていってもらおう。君達一般人が手にしていい物ではない」


エクソシスは手を出し、こちらへ渡すようにしている。


『…生憎、それは無理な話だわ』

「私達は一般人ではありませんから」


穏やかな口調で答えたのが良かったのか、笑顔を見せるとエクソシストに一瞬の隙ができた。


「…何?サポーターか?」

『馬鹿ね、違うわ。…敵よ』

「エクソシスト!!」


アルは手の一部分を転換させエクソシストに向かう。

レベル5のアルの速さから逃げられる事もなく、エクソシストはアルの餌食になった。


「…ぐっ!………何っ」


アルの爪が刺さったままエクソシストは呻いた。


「…っあ!……ぐ、何だ…ッ!!何かが……っ!」

「何かが入って来る感じ、ですか?」

「!?」


ドクドクと血が流れ出ていくにもかかわらず、逆流してくる何かがあった。



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