□無言の眼





「…只今戻りました、カーティス様」

『あ、アル』


スッと部屋の片隅からアルが現れた。


『おかえりアル。どうだった?』

「…ぇ、そ、そのカーティス様にご迷惑をおかけして…」

『そんな事どうでもいいよ?…で、順調なの?』


カーティスがアルにそう聞くとアルは俯いて黙り込み、コクリと頷いた。


『きゃー!ホント!?やったじゃないアル!』

「あ、でも…しかし…」

『弱気は駄目よアル!常に前を見据えて、頑張るのよ!』


アルの肩をガシリと掴み激励するカーティス。

アルは戸惑いながらも、激励されたことが嬉しく、「…はい」といって微笑んだ。


「ねぇ〜何の話ぃ〜?」


状況が分からないロードは首を傾げるだけで。


『ロードもいつか分かる日が来るよ』

「何それぇ、ボクに隠し事ぉ?」

『じゃ、いつか話すよ。それでいい?』

「ボクには隠し事しないでよぉ?」


カーティスを見つめるロード。

その目には少し不機嫌さが写っていた。
こうやって見ると、他愛のない事で拗ねるところは歳相応に見えて可愛いらしい。


『分かってるって。隠し事しないよ。ロード大好きだからね』

「ボクも好きィ〜。カーティス離さないからぁ」

『ふふっ、ロードにだったら捕まっても良いかな?可愛いし』


ロードはカーティスに抱き着き視線をアルに向ける。

アルはロードに気付き、視線をロードに返す。




「……ッ!」




そこには酷く冷たい眼があった。

虫けらを見るような、冷たい眼差しが。



〔"……お前さぁ…"〕

「……っ!」


アルの頭にロードの声が響いた。

口は動かさず、こちらを見ている。

笑みを浮かべて。


〔"……邪魔なんだよねぇ…"〕

「…す、すみませ…ッ!」

〔"…ボクのカーティス、独り占めしたつもりぃ…?"〕


怖い。


〔"カーティスがお前なんかを大事にしてなかったら今すぐ自爆させてたのになぁ……"〕

「…もッ、申し訳ありま、せん……っ!」


怖い。

本気の、眼だ。


〔"…カーティスが悲しむような事はしないけどさぁ……


―――― ― ‥今は、"〕

「…お……お許しをッ………ッ!」

『? アル?』


アルはカーティスの後ろにいるため、カーティスからは見えない。

カタカタと震えるアルをロードは笑顔で見ている。


『アル?どうしたの?』


ロードが抱き着いたままで振り返ることが出来ない。


「…しらなぁい?何言ってんだろぉね…可笑しい…クスッ」


ボクからカーティスを取ろうなんて、百万光年早いんじゃない?


ねぇ、アル?




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