□私の事情





私の事を知らなかったジャスデビが探しに来たって事は、私の事情をティキかロードが話したからだろう。
大きい背中はいつも私を守ってくれている。


私が、弱いから。




『…ごめんね…』


ちょっと、涙が滲みそうになった。


「はあ?なんだそりゃ。ごめんとか、そんなのいらねーよ」

『だって…、私、ノアの中でも一番頼りなくて、弱い…』

「そんな事ねぇよ」




どうしてそんなに優しいの?


『私は、役立たずだよ…』

「そんな事、絶対ないって」


邪魔なだけなのに。

こんな、中途半端な私が居ることなんて。
ノアにとって、なんのメリットなんかない。
なのに、なんで皆優しくするの…?


「…大切な家族だからだよ」


気付いた時には、ティキの腕の中にいた。


『ティ、キ…』

「弱くて何が悪い?普通、女は弱いモンだろ?」

『でも…』

「俺はそれでもいいと思うけどな。弱い方が守り甲斐があるってもんだろ?」


ティキの温かい手がカーティスの腰回りを軽く抱く。


「それに、女が強かったら男の立場無くね?」


守ってやりたい、そういうのが男の性てもんだ。

カーティスの頭に顎を乗せ、頭を撫でている。

愛でるように、優しく。


「…まだ、"アレ"の事に気にしてるのか?」


優しい声音でカーティスに聞く。カーティスは無言のまま小さく頷いた。


「そんなに気にするな。いつか必ずその時は来るって」

『…でも、いつ来るか分からない』

「お前は少し特殊なだけだ、そんなに深く考え込むな…」

『そんな特殊いらない!!』


肩を震わせながらカーティスは叫んだ。


『いらない…っこんな、こんなの…。こんな事だけが特殊なんて嬉しくない…っ!』

「カーティス…」

『本当はティキだって迷惑だと思ってるんでしょ?私みたいな中途半端な奴がノアだなんて…、足手まといだって、

分かってるわよ、こんなノアのメモリに半覚醒な奴、居るだけで迷惑だって』


カーティスは、涙声でそういった。


そう、カーティスはノア。

その中でも珍しい、というか初の半覚醒状態のノアだ。
能力だけが先に目覚め、肝心なメモリにはまだ目覚めていない。

能力も、メモリが完全に目覚めなければ本当の力は発揮されない。

本来の力の一割程度しか発揮できていないのだ。

加えて、力を使えばオーバーヒートを起こして七日から八日は力が使えない状態になる。
普通の人間と同じになってしまうのだ。

ついこの間、力を使ってしまったカーティスは今、何も出来ないただの人間。

ジャスデビ、ロードはその力の使えない時期であるカーティスを心配したのだった。


『本当、使えない奴よね。私って…』


カーティスは吐き捨てるようにそう言った。


『こんな暗くて役立たず、嫌いになってもいいからね?』



嘘。

本当は嫌いになんかなってほしくない。


「…」


ティキの、沈黙が痛い。


「俺は、そんな理由で嫌いになることはないよ…」


嫌いだったら、心配して、探しに行くわけないだろ?

こうやって手当てして、抱きしめたりしないだろ?

俺がこんな事してるのは、俺がこうしたいから。


「好きで…こうしてんだよ」

『……』


まだ分からないか?





「お前の事が好きなんだよ」




ずっと、ずっと前からな…。







==============================



- 15 -
*前次#



back
TOP