□芽から蕾へ






『嬉しい。アルが恋をしたなんて。これもレベルアップしたお陰ね』


にこにこと普通に祝ってくれた、主。
ただ、私は一つだけ嘘を着いています。

カーティスの笑顔を見て、アルはさらに罪悪感に浸る。


「(恋をしたって、いつかは…)」


終わりの日を迎えてしまうのだから。

だって私はアクマだから。

そして、彼はエクソシストだから。



それはいつかきっと、選ぶ時が来るはず。

主である方の敵に恋をしてしまっただなんて。

タブーを侵してしまった。


カーティスが純粋に喜んでくれればくれるほど、アルの心はちくちく痛む。


「…カーティス様」

『恋はいいことよ、アル』

「…そう、ではなくて…」


言いづらい。

この先、私は主とあの人の間を行き来するの?


どちらが優先?

どちらが大切?


アルは、辛そうな顔をした。

カーティスはそのアルを見て、先ほどより落ち着き、優しい笑みを向けてやる。


『いいのよアル。恋は自由よ、相手が人間であろうと誰であろうと』


優しい笑みを絶やさずにいるカーティス。自分の事のように喜んでいる。


「誰であろうと…?」

『そう、誰であろうとよ?恋することは自然な事だもの。好きになる相手も自由よ。そうね、例えば


エクソシスト、とか』






「……ッ!!」

『隠さないでいいよ。隠したらアルが辛くなるだけだもの』

「カーティス様…」


カーティスはアルのことなどお見通しのようだ。


『アクマ達が壊されたのは悲しいけど、アルが帰って来てくれたから』


自分の我が儘で助けに行かせてしまったし、とカーティスは言う。
いつも我が儘を聞いてくれるアル。

アルは大切な友達。
私のつまらないことで束縛なんかしたくない。
だったら、折角培ったものだもの、感情を自由にさせてあげてもいいよね。


『おめでとう、アル。素敵な恋をしてね』


アルの手を取り微笑んだ。


「……ありがとうございます…カーティス様」


ありがとう、とアルは呟いた。





「…ん?」

『どうしたの?』

「…カーティス様、何故私が恋をしていたと分かったのですか?」


自分でも理解していなかった気持ちを主は見抜いていた。

それを見破ったカーティスを疑問に思うアル。


『だって、恋してる顔、してたもの』

「恋してる、顔?」

『それくらい分かるわよ』


この気持ちが、分かる?

自分でさえ気づかなかったことを、主は気付いた。
この時、アルの頭は素早く回っていた。

そしてピンときたのだ。



「…もしかして、カーティス様、も?」



恋をしている?
アルの問い掛けにカーティスはしばし目を見開いていた。
だが、そのあとは微笑み、人差し指を唇に当てた。


『内緒』


そう言って悪戯っぽく笑った。


恋は秘密で始まって

恋は内緒で終わるもの。

実る実らずは関係なく


秘密の恋は


二人の内緒。









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