□まるで必然








壊された…。





助けられたのに…!





「…何っ、て事を…!!」



声が震える中、その男を睨もうとその方を向くが。






パシンッ!!







「何がしたいんだテメェは!!危うく死ぬところだったんだぞ!?」





アルは殴られていた。



鈍い痛みが走る頬を手で覆い男を見る。



「アクマ壊れかけていたから良いものの、完全体だったら死んでたぞ、お前」





月が、雲に隠れて相手の顔が見えない。




「…ア、クマ…」


「何だ?知らないのか?」




知らないわけがない。


それは私の仲間だ。









その仲間を、お前が壊したのだ。

偉そうに説明するんじゃない。




けど、




私が襲われていると思って『助けてくれた』のも事実。




私が人間なら、感謝しなければならないところ。



仲間が破壊され、腹が立つのと、理由は違えど善意を持って助けてくれたというのと。



複雑な感情が入り交じり込み上げてくる。




「(どうすればいい…?)」




礼という事で、ここで見逃すか?




いや、彼等は服装からしてエクソシスト。





カーティスの敵。







どうする。






相手は一人。


今なら、殺せる。


殺すなら、今。




どうする。

どうする…。

お礼を言うのか?

どうやって言うの?


『ありがとう』?


仲間を破壊されたのに?

私のすべき事は…、

なに?


葛藤をし続けるアル。




それを晴らすかのように、月に掛かっていた雲が、ゆっくりと晴れていく。

光も射し、顔が見える。



クンッ…




急に早くなる脈。


「―――――ッ」


早鐘のように打つ心臓。

三日月を後ろに立つ姿。

黒服に包まれた姿。

何より、印象的だったのは、


黒髪…。




アクマ達には申し訳ないが、理不尽にもこの人だったらやられても仕方ない、とどこかで思ってしまった。


「―…アクマは、」


漸く声が出せた。

体は妙に強張っている。

生き残ったアクマはいないのだろうかと、わずかな願いを込めて聞いてみる。

だが、その望みも直ぐに崩れてしまうのだった。


「全て、破壊…」

「あぁ、破壊した。だから安心しろ」


望みの破片も、一つ残らず壊されすくいとることはもう出来なかった。

安心?出来る訳無いだろう。

お前が望みを断ち切ったのだから。
けれど、そう思いながらも、男の顔から目が離せないでいた。
表情は変わらないのに優しさを帯びている目。


「ここはもうすぐ崩れる。早く帰れ」

「……はい…」


敵に背を向け、仲間は見殺し。
助けにいった意味も無く、私はあなた様の元へ帰ります。

申し訳ありません。


私は…、


今の私は、変です…。


体中の血が熱く駆け巡り、
この鼓動は早く響くばかり―…






==============================



- 8 -
*前次#



back
TOP