□引き金を引く




扉の向こうからは、ジャスデビに言い攻められているティキの声が聞こえた。


「カーティス様、お体の具合は?」

『…平気。ティキが落ち着かせてくれたから…』


カーティスは自分の部屋に入るとベッドの上に座り込んだ。


「そうですか。良かったです…」

『?アル?』


いつもはハキハキと話すアルがしりつぼみながら言葉を発する。
なんだか、アルにしては珍しい事だ。


「カーティス様には、いつも笑顔でいて欲しいので…」


すみません、といって頭を下げる。

…なんだ、そういう事か。

アルはなんだかんだでカーティスには優しい。


『アル、あなたはもっと自分を大切にしなさい』


あたしはあなたの笑顔が好きなのよ。
そういうとアルは少し照れてまた「すみません」と言った。

大切な大切なあなた。

対等に話せるようになるまで育ってくれて本当にありがとう。

家族と同じくらい大好きだよ。
同じくらい、いいえ、もうあなたは家族だよ。

だから主従関係なんか気にしないで、普通に話して。

普通に、友達と話すようにあたしにも話しかけてほしい。

わたしは嫌だから。


あなたに主人と思われるのが。



『アル、…』

「はい…」



アルがカーティスに返事を返そうとした時、カーティスの部屋の電話のベルが響き渡った。

アルはカーティスに目で合図をし、受話器をとる。

内容は、エクソシストにやられそうだから加勢を頼むということ。


カーティス様がこんな時に…。
不安でいけるはずない。


「…カーティス様…」

『いいよ、行ってあげて、アル』


あたしの大切な家族を守ってあげて。

レベル1とレベル2とじゃエクソシストにやられてしまう。


これ以上は……。


『お願い、アル…』

「…解りました。直ぐに戻ります」


そしてアルは窓から出ていった。
アルの背中をカーティスは見えなくなるまで見送る。


無事にアルが帰って来る事を祈って。












「ヒ?あれは…?」

「ん?あ、カーティスのお気に入りのアクマじゃん?」

「どこ行くんだろね?」

「さぁ?カーティスのことだし、弱いアクマでも助けに行かせたんじゃねぇ?」


あいつもよく頑張るよなぁ、とデビットはアルの後ろ姿に銃口を向けた。


「健闘をいのるぜ?なぁ、ジャスデロ?」

「ヒッ!そうだね!」



愛しい人の愛しいアクマ。

傷ついたり、壊れたり、死んだりしたら俺達が許さないから。

俺達の大切な人を悲しませるような事だけは許さないからな。



だから、ちゃんと帰っておいでよ?

アルシア。



そんな皮肉も少しだけ込めて、デビットは空に向かって引き金を引いた。



はなむけの引き金、ゆっくり引いて。

出ていった後の銃声一つ。









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