sirop
ひのてんR18

『職員会議だってよ!』

『ど、どうする? さすがに血だらけで料理できないし』

『探せば絆創膏くらいはあるんじゃない? 亜子先生優しいから、事後承諾でも怒らないよきっと』

『じゃあ少し探させてもらおっか』

次いで、ノックの音。
天子は急いで呼吸を整え、すぐに息を詰める。

「失礼しまーす。よし、誰もいない…あっいた!」

「しーっ! 具合悪くて寝てるんだから、静かにしないと」

女子学生が二人。会話から察するに、ひとりが調理実習で怪我をしたのでもうひとりが付き添いで来たらしい。絆創膏で済むなら指辺りを軽く切った程度だろう。彼女たちは天子と同じく、ガタガタと戸棚を捜索し始める。
動揺を滲ませ、睦み合ったままの手を握れば、応じるようにそっと髪をかき混ぜられる。さっさと見つけてこの場を去ってくれと願うが、やはりもたついている。

「包帯ならこっちにあるのに」

「できれば耐水性あるやつがいいなぁ」

「まだ洗いもの残ってるもんね。早く戻らなきゃ」

(早くしろ……!)

じりじりと息を潜めるほどに、内部へ入り込んだ熱を意識してしまう。動いているのは己の鼓動と、もうひとつの鼓動だけ。それらが振動となって伝わる臓器と、神経と、粘膜が、ひとつに繋がればもう耐えられない。体というのは正直なもので、そう思えば思うほど、刺激を勝手に作り出すから始末が悪い。

「っ………」

(さっきから、匂い、が……)

突っ伏したシーツの残り香で否応なしに興奮させられ、繋がった場所が微かにわななく。五感をシャットアウトしたくても、明確に切り離せるのは味覚だけ。詰めていた息を恐る恐る吐き出すと同時に、熱を孕んだ粘膜がきゅんと疼いた。

「!」

耳の裏に小さく口づけられ、のしかかった体が緩慢に動き出す。合図と気づいた天子はきつく手を握って首を振るが、繋がりを甘く揺すられて吐息がこぼれた。

「っ、っ……!」

カーテンで囲まれた半個室の中。男二人がじゃれ合っているとは夢にも思わない彼女たちは、手を動かしつつ小声で軽快なトークを交わしている。

「付き合って三日でエッチするって有りかな?」

「やだー、不潔不潔! 順番があるでしょそういうの」

「蓮商の友達は有りって言っててさぁ、あの学校は女多いから明けっぴろげだよね。蓮華の男子と付き合ったらクソ下手だった!とか言い出して笑った、『勉強ばっかりしてるからでしょ』だって」

「上手いとか下手とかあるのー?」

「あるでしょそりゃ、痛いだけとか聞くし」

「まー、せっかくなら上手いに越したことはないけどねぇ」

なんとも明け透けな会話だ。天子は呆れながらも内容を反芻する。
双方の合意と物品の準備さえ怠らないなら、即日でも三日でも勝手にすればいい。そして蓮華の男子でも上手い奴はいる。以上。

「っ!」

逸れた意識を無理やり引き戻そうと、奥に潜む弱点を優しく突かれた。ねっとりと耳を舐められ、視界が徐々に歪んでいく。

「あ、あったー!」

「どれどれ? ほんとだ、しかも水に強いやつ! よかったー」

「あっ……う、うるさかったかな、すいませーん」

「お邪魔しましたー」

救急箱のカバン錠をかちかちと締める音が響く。棚に収めた彼女たちはカーテンの向こう側へ謝りながら廊下へ連れ立っていく。
引き戸がぱたんと閉まったところで腰を掴まれ、指では届かなかった場所を強かに抉られた。

「んぁっ」

ほどけた唇から漏れる正直な声音。しかし彼は苦笑しただけで、咎めることはしなかった。奥から入口までを断続的に貫かれ、敏感な箇所をわざと摩擦される快感に啜り泣くしかない。

「や、だ……っ、そ、な、おく、……ぅあっ!」

「ごめんね。僕もあんまり余裕がないんだよ」

自然と前に逃げる体を押さえ込まれ、たん、たんと骨盤がぶつかるほど腰を打ち付けられれば、張り詰めた中心が揺れて涙を振り撒く。その真裏には硬い楔が粘膜を掻き分ける度に押し当たり、さらに奥の精嚢までがつがつと穿たれて、特有の浮遊感に己が既に達してしまったような錯覚すら覚えた。

「お腹すいてるの。すごく」

「ぃ、ぁあ!」

熱っぽく囁かれたのち首筋に甘く歯を立てられ、引きつった痛みを覚えればしっとりと舌が這わされる。

「この匂いも味も、全部に煽られる。我慢してたのは、てんこだけじゃないからね」

「ぁっ…、あ……!」

襞のひとつひとつを嬲りながら抜き出されていく重みに身悶える。質量を逃がすまいと追いすがる蕾に先端だけを残し、疼く粘膜を目一杯に擦り上げられて悲鳴じみた声が溢れた。

「ぅあ、あぁ…っ! や……っ、ゆっ、くり……っ」

「ゆっくりしてあげたいとは思ってるんだよ。ごめん」

腹の中が熱い。ぐずぐずに溶けた場所を執拗に掻き回され、ほら、と叱咤するように腿の裏を叩かれた刺激にさえ恥ずかしい吐息が漏れる。

「もう少し腰上げて。これじゃ奥まで入らないの、わかるでしょ?」

「だ、って、ん、ぅ………っ」

熱を頬張る筒はきゅうきゅうとうねるばかりで、彼を悦ばせようと本能ごと乗っ取られており、持ち主の命令など聞きやしない。はしたなく揺れる中心をぐしぐしとシーツに擦り付けていると、痺れを切らした彼に腰を高く固定され、勢いのまま深々と穿たれた。

「ぁあ……っ」

一人用のベッドがガタガタと不相応に鳴る。幾度も首筋を吸われ、耳の中まで乱暴に舌を捩じ込まれてざわりと全身の皮膚が粟立った。

「あ、や……っ、チャイム、鳴って……っ」

恍惚とした空間を冷たく塗り替えるような、無機質なアラームがスピーカーから流れてくる。壁をいくつか隔てた先で、一斉に椅子を動かす音も聞こえた。膝から下をばたつかせてもがくが、彼は素知らぬ態度で微笑んだだけだった。

「大丈夫。後で一緒に怒られてあげるから」

「んなの、やだ……っぁ、あ、うごく、な…っ!」

廊下を行き交う無数の足音。焦燥にきゅんと内部を締め付ければ、そこを陣取る熱の形をまざまざと感じ取ってしまう。内壁が狭まるほどに、嵌まったものがみちみちと隙間を埋めていく。

「可愛いね。興奮してる?」

「ち、がうっ……、こんな、してる場合じゃねえ、って……、ひぁっ」

濡れそぼった中心に長い指が絡みつく。滑りを借りながらくちゅくちゅと優しく扱かれ、同時に後孔を深く犯されて両膝が震えた。

「さわ、な……っ、は、あぁ…!」

「もう限界でしょ? ほら、てんこの好きなことしてあげる」

「やっ、ん、んん―――っ!」

一段と狭くなった奥側の内壁をこつんと突かれ、下腹部をびりびりと揺るがす刺激に声も上げられず背を撓らせる。自身を弄んでいた手で汚れた腹を撫で上げると、火野は満足そうに笑みをこぼす。

「ここ、びくびくしてるね。てんこもお腹すいてるのかな」

「だ、め………っ、そこ、やめ……ぇっ」

よく慣れた手前のしこりを存分に擦り潰しながら、トントンと奥まった箇所を奔放に小突かれる。はぁ、とうなじを掠める吐息にすら情欲を煽られた。

「いいよね? 後でちゃんと掻き出してあげるから」

「は……っ!? や、なんで……っ」

「何でって…僕もさすがに、保健室にまでそんなもの持ち込まないよ」

探せばあるかもしれないけどね、と苦笑混じりに呟かれたのち、激しくなる抽挿に喘ぐ声すら途切れ途切れになった。生身の彼を嵌め込まれたそこは精をねだるようにきゅっと窄まり、ぬるつく粘膜を絡み付かせる。

「素直ないい子だね。好きだよ」

「ぃ、やだ……っ、なか、ぁ、あ――――っ!」

奥まった隘路を硬い先端でぐりぐりと捏ね回され、目の前が白く明滅する。内側をきつく引き絞るや否や、敏感な場所にたっぷりと放たれる熱量。頭の芯が溶けてしまいそうだった。
痙攣を繰り返す下腹部を優しく撫でながら、彼が乱れた息を鼓膜に吹き込む。

「ふふ、吸い付いてくる。たくさん味わってね」

「っひ、う………っ」

体の内外で密着したまま、ビクビクと腹の奥だけがひっきりなしに震え、喉を鳴らすように甘露を飲み干そうと蠕動する。
意識がスッと闇に溶け込んだ。


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