オーバーライト
ひのてんR18

「ひ、っぁ………!」

「前にした時は痛がってたから、あんまり可愛がってあげられなかったんだけど。ここ、今は全然違うよ。僕にずっとキスしてる」

「そ、なっ、言わな……っ、ぁあっ」

ちゅ、ちゅっと吸い付く内壁を引き剥がしては押し込み、ゆっくりと粘膜をいたぶっていく。反り返った中心は比較的穏やかな揺れに合わせて、震えながら腹に雫を飛ばしていた。

「物欲しそうにおねだりして、かわいいね。急かさなくても、ちゃんとここに注いであげるから」

ここに、と体液の散った下腹部をゆるりと撫でられる。天子は慌てて身を捩ろうとしたが、脚を抱えられていては身動きが取れず、嬌声の合間に驚嘆の声を上げた。

「え、ぁ……っ!? や、うそ……、っ」

「嘘じゃないよ」

「な、んで……っぁ、つけて、なっ…」

「うん、着けてない。何でって…」

露になったうなじを舌でなぞられ、鼓膜に程近い場所で甘ったるく囁かれる欲望。

「――全部塗りつぶして、上書き、してやりたいなって」

「――――っ」

先端を舐め回していた潤沢な粘膜が震え、奥へ奥へと引き込む隘路のひくつきが増す。声にせずとも伝わる内壁の動きに、火野は喉の奥でそっと笑った。
しかし。

「んぐっ」

不意に手のひらで無理やり口許を押さえつけられ、天子は苦しげに息を詰まらせた。無論、鼻での呼吸は可能だが、何か自分に不手際があったのかと不安が胸の内に広がる。顔が見えない体勢なら尚更だ。
懸念とは裏腹に、しい、と耳元で囁かれた声音は優しかった。その安堵でふっと弛緩した体に、火野が恐るべき一言を放つ。

「誰か来たから、静かにね」

「っ!? む、ぐ……っ」

そこへすかさず響く、怠そうなノックの音。やってやったぞ、と言わんばかりだ。
部外者の来訪に、天子はさあっと己の血の気が引くのを感じた。そうだ、ここは学校。いつ誰が尋ねてきてもおかしくない状態で、自分たちは事に及んでいたのだった。直前までどっぷりと甘い行為に浸っていたせいで、脳内はほとんどパニックで占められている。
対して、火野は淡々とした声で物騒な台詞をドアの向こうに投げかけた。

「開けたら殺すよ、輝」

はい、という応答を当然予想していた彼の幼馴染は狼狽する他ない。すぐさまドア越しに不満が吐き出された。

『はぁ!? おま、客に向かってなんてこと――』

「今忙しいの。後にして」

「っ、………」

音は詰まるところ波の一種だ。彼の声は細波となって振動を起こし、鼓膜を甘く揺さぶっていく。体が小刻みに震え出し、深く繋がった場所をいったん意識してしまうともうだめだった。

(つけて、ないって……)

つい先程の会話が思い起こされる。
衛生面を考慮してか、自分の体を労ってのことか。彼はいつもきちんと備品類を用意していたし、肌を重ねた回数が少ないとはいえ、準備を疎かにされたことは一度もなかった。場所が場所であっても、痴漢への怒りが感情を支配していたとしても、常に冷静な彼がそういったことを忘れていたとは考えにくい。
だとしたら、本当に――。

『上書き、してやりたいなって』

「っ、ふ………っ」

自然と下腹部に力が込もり、柔らかな襞がきゅうと熱に絡み付く。つるりとした有機物ではない、生身の肉の感触。技術の進歩故か、正直言って明確な差は感じ得ないが、脈打つ鼓動がずっと奥まで響いているような気がした。

(ここに、出され…たら、)

第二の心臓の如く力強いもので最奥を抉じ開けられ、欲の種を容赦なく浴びせられるのだろうか。困惑と焦躁、そして仄かな期待。精を搾り取るべく否が応にも内壁がきゅんきゅんと疼き出し、天子はきつく目をつむった。
ドアを隔てた攻防は依然続いている。

『忙しいってなんだよ、実験してるわけじゃねーんだろ。明日返すからノートだけ貸してくれ』

「知らない。勉強さぼった自分を呪うことだね」

『てかなんで開けたら殺すなんだよ! おい』

「それくらい察してよ。かわいい子と楽しくしてるからでしょ」

「っん、……!」

口を塞いでいるのとは逆の手がスルスルとシャツをたくし上げ、無防備な胸の尖りを悪戯に責め立てる。天子は慌ててその手首を掴むが、構わず指先でくりくりと摘まれ、悩ましげな吐息が漏れてしまう。
それが聞こえたわけではなさそうだが、時宮が驚愕したのは言うまでもない。

『は……あぁ!? なに部室に連れ込んでんだコラ! ふっざけんなよ羨ましい!』

「お前がどう思おうと関係ない。別にいいんだよ、開けても。僕は恥ずかしくないし」

「んっ、ん………っ!」

深く抉られたところをわざとらしく捏ねられて、壁と熱の摩擦に身悶える。ぷちゅぷちゅと潤滑剤が軽い水音を立てながら、体液と混ざり合って内腿をしとどに濡らしていく。派手なソックスに包まれた足指をきゅっと丸め、天子は緩くかぶりを振った。

(だ、めだ……、こんなの、も……っ)

熱でとろけた内部を掻き回されるのも堪らないものはあるが、ぐりりとピンポイントに疼く場所を押し上げられて、ひと突きごとに頭の中で白い火花が散っていく。すぐに達してしまう刺激ではないものの、これがしばらく続くようなら間違いなく気が触れてしまう。
早く楽になりたいと思う反面、上下の接触面が増える度にじわりと粘膜が溶ける快楽から抜け出せなくなりそうだ。

『ったく! わかったよ諦めりゃいいんだろ! じゃあな!』

一方、火野とお楽しみのさなかにあるのは女の子と信じてやまない時宮は、投げやりに言い捨てて準備室を後にする。実験室からも足音が遠ざかったことを火野は確認し、天子の口を塞いでいた手をようやく下ろした。

「ごめんね、苦しかったでしょ。ほんと空気読まないんだから」

「ん、ぁあっ」

ぐいと脚を抱え直され、抑えていた嬌声が堰を切って溢れ出る。口元を離れた手が、すり、と妖しい手つきで腹を撫でた。

「ここ、可愛かったね。我慢してる間ずっと震えて、僕のに吸い付いてきて」

「! そ、んなっ、あっ、ぁ――――!」

両腿の裏を持ってゆさゆさと優しく揺さぶられ、深く突き立てられたものがトンと奥を叩く。うなじに何度となく吸い付き、火野は欲の滲んだ声を流し込んでくる。

「このまま、てんこがおかしくなっちゃうまで可愛がってあげるのも悪くないね」

「ぃ、やだっ、ぁっ……、もう……っ」

とうに己の体液で濡れそぼった中心がふるふると頼りなさげに揺れている。終わりのない快楽にふっつりと意識が途切れそうになると、すかさず下から腰を入れられて。
いやいやとかぶりを振りたくれば、火野はくすっと笑って天子の体を横たえた。ぬるりと抜き出された熱に、今の今まで咥え込んでいた後孔がひくひくと開閉する。

「じゃあ、それはまた今度ってことで」

天子を仰向けにして覆い被さると、不吉な台詞を笑顔に乗せて口づけを落とす。

「っ、…ん……」

理性の箍もすっかり失われているせいか、ぺろりと先に舌を差し出したのは天子の方だった。ちゅ、と先端を吸って、長い舌をゆっくりと絡める。

「ふ、ぅ、……っん、んん…っ」

震える舌や敏感な口腔を愛撫され、加えて柔らかい耳をすりすりとマッサージするように揉まれる。次第にとろんと瞳が溶けていくと、脚開いて、と火野に優しく促された。力の入らない四肢をおずおずと動かして、男を迎え入れる姿勢を取らされる。


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