オーバーライト
ひのてんR18

「ぅあ……っ」

突き当たるほど奥まった場所ではないにしても、内側の襞を掻き分けて押し込まれたものは熱く、体がカウチをずり上がる程の衝撃だ。その体を引き戻すように浮いた腰を両側から掴まれ、訪れる快楽の予感にクッションカバーをきつく握る。

「っひ……あ、」

抜き出されていく熱を必死に繋ぎ止めようと蠢く粘膜の浅ましさに泣きたくなる。本来の使い方ではないのに、舐めるように蠕動を繰り返す腹の中は自身の命令など聞きやしない。道がきつく狭まれば、当然ながら下肢を介して火野にも伝わる。

「ここ、なかなか抜かせてくれないね」

「っ………」

小さく漏れた苦笑に耳が熱くなる。そんなことを指摘されるくらいなら、慣れずに狭い方がまだ良かった。
羞恥に伴ってきゅっと内部が収縮すると、咥え込んでいたものが隘路をぐっと突き進んでくる。

「んっ、あ……っ」

退くとばかり思っていた熱を逆に捩じ込まれて、欲を湛えた瞳から涙が溢れ落ちた。耳の柔らかな部分を軽く食んで、火野が甘い毒を流し込んでくる。

「こうやって、欲しいものでたくさん満たしてあげるから、ね？ ゆっくり動かせて？」

ぞわぞわと背筋を走った痺れが腰の奥を穿つと同時に、内部を占めていた質量がざらりと摩擦を伴って外へ奪われる。敏感になった襞のひとつひとつをたっぷりと擦り上げられ、天子はクッションに口許を埋めて嬌声を堪えた。

「んぅ……っ」

「そう、いい子だね」

臀部から太腿にかけてを、火野が褒めるように優しく撫で下ろす。そのまま太腿に手のひらを置いて固定し、ぐずぐずに溶けた筒をゆっくりと、腰を使って掻き回していく。

「んっ、んう……っ」

足された潤滑剤の粘着質な音と、よりスムーズに突き入れられる重みに身悶える。深く沈んだ場所で腰を回され、先端がぐりっと壁に突き当たる度に、腹の奥が震えて熱を舐め溶かそうと躍起になった。決して激しい動作ではないのだが、感じる一点を的確に抉られ続けている。
ふーふーと荒い息をクッションに逃がす苦しげな恋人を見てか、唾液に濡れた布地を押しやって火野が言う。

「声、頑張って抑えなくていいよ。そこまで聞こえないから」

「んあぁっ」

ぬぷん、と最奥に近い深みまで潜り込まれ、快感に正直な甘い声が喉から溢れる。慌てて丸めた手を押し付けるも、ここだよね、と快楽の源泉に先端を擦りつけられては抑えなど効かない。

「は……っ、あ、ぃやだ、それ……ぇっ」

硬い楔へ媚びるように絡めた粘膜を物ともせずに、奥から入口を幾度も摩擦される。

「嫌じゃないよね？ てんこの気持ちいいところ、いっぱい可愛がってあげる」

「ふ……ぁっ、あぁ……っ」

片手を繋いで覆い被さられ、ひときわ強く腰を打ち付けられた。剥き出しの背中が反らされれば、開かれた脚の間で雫を溢し続けているものも物欲しげに揺れる。白濁混じりの蜜を指先にすくい取って、火野はふっと微笑んだ。

「かわいい。ちゃんとイけてないだけで、軽いのはもう何回も来てるでしょ」

「！ ちが…っ、んん――――っ」

「嘘ついちゃダメだよ。ほら、突く度にびくびくしてるのわかる」

反射的に頭部を左右に揺すると、先端ぎりぎりまで抜き出されたものをひと息で埋め込まれて唇を噛み締める。ぷつりと表面の薄皮が裂ける痛みで自我を保ったが、絶頂を耐えられる自信はない。

「ちょっと乱暴にしちゃうけど、怖がらないでね」

「あ！ やっ、これ……あっ、ぅあぁっ」

両腕を背中でひとまとめにされ、手首の辺りを掴んで腰を前後に動かされる。唯一の支点である両膝は震えっぱなしだ。大した抵抗もできないままがつがつと突かれて、彼の腹部が尻に当たる感触にさえ羞恥を煽られた。

「は、あぁっ……、も…っ、やぁ……！」

熱で溶かされた内部はトロトロと柔らかく、しかし突き入れられるものを健気に締め付けてもてなしている。腹側の凝った弱点や、その上の精嚢の裏を何度となく擦られ、唇の端から呑み込み切れない唾液がとろりと溢れて天子の顎を濡らした。

「ここ、ちゃんと気持ち良くなってるんだね。入口もそうだけど、奥の方まで吸い付いてくる」

「…っ、んぁあ……っ！」

熱っぽく囁かれた台詞に、全身がぶるりと震える。奥深くで疼く場所をすかさず先端で抉られ、やや強引に彼の全てを押し込まれた。

「腕、痛かったでしょ。ごめんね」

解放された両腕がだらんとカウチに落ちる。安堵する間もなく、繋がったまま体を起こされて天子は当惑した。

「ひ……んっ」

ウエストに回った腕でゆっくりと上体を抱えられ、抜けそうになったものを思わず締め付ける。大丈夫だから、と耳元でこぼされた苦笑が恥ずかしくて堪らない。

「寄りかかっていいよ」

「っん………っ」

カウチに掛けた火野の膝に座り込むような体勢で、胸を軽く押して促された。深い挿入を余儀なくされる体位だ。唇を噛み締めてかぶりを振ったが、とうに力の抜けきった体では思うように抗えない。普段であれば、力勝負は絶対に負けないはずなのだが。

「遠慮しないで。ほら」

「んっ、ん――――！」

太腿の裏を背後から抱えられ、傾いた背中が彼のニットベストに受け止められる。背を預けると同時に、嵌めたままのものでずんと最奥まで突かれて、濡れそぼる中心からとぷりと白濁が漏れてしまう。
まだ達してはいないのに――むしろいつ達していてもおかしくはないのに、腹の中では今もじわじわと熱が溜め込まれている。蹴上の低い階段を一段ずつ上っていくようなもどかしさだ。

「体、柔らかくていいね」

「や………っ」

柔軟性に秀でた股関節を左右に開かれれば、彼と繋がった場所がひやりと空気に触れる。準備室の入口と相対しているとあって、誰かがドアを開けたら天子の痴態が真正面に見えてしまうだろう。
火野もその点に気づいたのか、扉を意識した天子があからさまに内部を狭めると低く笑った。

「そういうのがいいのなら、てんこに触ってきたお馬鹿さんに見せつけてあげたいなぁ」

「！ ち、が……っ、ぅあ…っ」

「こうやって…ちょっと動かすだけでかわいい声が出ちゃう姿を見せたら、男として負けた気にはなると思うんだよね」

どうやっても激しくは動けない体勢だが、深々と埋め込まれたものがとんとんと奥を叩く度に足先が揺れ、腹の奥がひっきりなしに痙攣を繰り返す。

「ぃ、やだ……っ、これっ、あ、んぁあっ」

硬い先端でぐりぐりと奥を抉じ開けるように腰を回され、少しでも動きを制限しようと、打ち込まれた杭をきつく締め付けてしまう。腹の疼きは増していくばかりだ。ふふ、と背後で嬉しそうにこぼされた笑みが耳をくすぐった。

「どうして嫌なの？ 痛い？」

「はら、へんになる……っ。いたくは、ない、けど…っ…」

「それは気持ちいいってこと？」

ぴったりと天子の背を密着させ、太腿を持ち上げて軽く揺さぶる。角度を変えて小刻みに内壁を突かれ、繋がった肢体がビクビクとのたうった。


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