オーバーライト ひのてんR18 |
「痛いことしないから。ね」 耳の裏にちゅっとキスが落ちる。シャツを捲り上げてから肩甲骨の盛り上がりにも唇で触れ、くすぐったさに身を揺らす。が、カウチに面した心臓はばくばくと高鳴るばかりだ。 『痛いことはしない』。火野がそう宣う時は大抵、とんでもなく恥ずかしくてとんでもなく気持ちいい時の前触れなのだ。確かに痛くはないのだが、理性を直火で炙られるような羞恥と快感はあまりにも耐え難い。 「っ、……」 背骨に沿って、つーっと舌が骨盤近くまで下りていく。女体のように括れてもいない脇腹を軽く吸われて身動ぐと、今度は強めに皮膚を吸い上げられた。鬱血の痕がくっきりと残ってしまったに違いない。しかしそこだけでは飽き足らないのか、緩やかな愛撫は続く。 女にするみたい、とまでは言わないが。こんなふうに、本当に大事にされているような扱われ方がただただ慣れなくて、天子はいたたまれない。決して嫌ではないのだが、何も考えられないくらい激しくされた方がまだよかった。ぎゅっとクッションの端を握って耐える。 腰骨の辺りへ飽きることなく口づけられ、尻の丸みを緩く揉まれて、僅かに声が漏れた。 「っ、や………っ」 下腹に腕を回して引き上げられ、腰がふわりと浮く。あらぬ所に触れた吐息に、まさかと血の気が引く思いがした。 「ひっ、やぁ……っ」 狭間の奥、固く閉ざされた場所に、熱くて濡れた感触が押し当たる。ちろちろと襞を濡らすように先が動かされ、天子はきつくクッションを握り締めた。 「いや……っだ、こんな……ぁっ」 這って逃げようとすれば、するりと前に回った手で中心を捕らえられる。キュッと根元を握られ、迫り来る絶頂感を無理やり塞き止められた。こんなことなら、触れられた際に我慢せず出しておけばよかったと悔いても遅い。 「ひ、ぃ……っ、ぁ、いやぁ……っ」 きつく締まった場所をこじ開けるべく、舌がぐりぐりと潜り込んでくる。そんな所を指以外で触られるとは思ってもみなかった。いくら火野が望んでやっていることとはいえ、もはや恥ずかしいを通り越して申し訳ない。じんわりと滲んだ涙は情けなさ故か、それとも快感か。 「き、たなぃ、……っ」 「汚くないよ。…ここ、しばらくほっといたからきつくなっちゃってる。痛かったら言って」 そう言うと再び頭を伏せ、両の手で開いたそこを舌で割り裂く。ぬぷ、と舌先が肉を割る感触に、どうしてもそこを締め付けてしまう。 「ぃ、や……っ、それ、やだ……っ」 「本当に嫌?」 「んうぅっ」 前に絡んだ手をくちくちと動かされ、濡れた音が否応なしに鼓膜を貫く。そうして力が緩んだ隙に尖らせた舌をずぬりと中に捩じ込まれ、頑なだった入口が徐々にほぐされていく。 「ぅ、ぅ……く……っ」 ぬるぬると内外を往復する舌の動きを意識せずにはいられない。敏感な場所にぴちゃりと触れる感触はおろか、全身の皮膚が粟立つ感覚すら、快感と錯覚してしまいそうで。 舌を抜かれ、火野の指を宛がわれると、ぱくぱくと物欲しげにひくつくのが恥ずかしくてならない。 「ここはちゃんと覚えてるね。いいこだ」 「ん――――っ!」 ずぷぷ、と前触れなく中指を埋め込まれ、慎ましやかな入口と柔らかな肉を優しく割り裂かれる快感に身悶える。 内壁がきゅんと蠢き、刺激を欲しがるように指へ肉を絡み付かせた。根元を戒められていなかったら達していたかもしれない。クッションに嬌声を預けたまま、ビクビクと肢体が甘く揺らめく。 「痛くない、とは思うけど。こっちすごいね、とろとろ」 「ふぅっ、んふ……っ、それ、はなし、て……っ」 蜜にまみれた先端をくるくると指先で撫でられ、腰が悪戯に前後する。下腹で渦巻く熱を塞き止めている手をかりかりと爪で掻いて懇願するが、だめ、と火野は柔らかい声で拒絶した。 「ここでこんなに感じてるの、初めてでしょ? せっかくだから、指じゃなくて僕ので気持ちよくなって?」 「む、り……っ、そんな、ふあぁっ」 二本まとめて入り込んだ火野の指が、ぐちゅぐちゅと内部を掻き回す。濡れているのは吐き出された蜜をすくって塗り込めたためか。すっかり馴染んだ粘膜がきゅうと指を締め上げ、その反発を物ともせずに中を押し開かれると頭がおかしくなりそうだった。 ぬぷ、ぬぷ、と揃えた指を緩く抜き差しされて、飲み込めない唾液がとろりと口の端からこぼれ、涙と共にクッションに吸い取られる。 「な、かっ、へん、だって……ぁっ」 「変じゃないよ。僕のことこんなに欲しがってくれてる。違うの?」 くぱぁ、と浅い場所で指を開かれ、てらてらと潤った媚肉が質量を求めてうねっているのがわかる。満足そうに笑って、彼はさらに本数を増やしていく。 腹の方にふっくらと突き出たしこりはおろか、内壁に突き当たる度に腰をびくつかせる過敏な反応に、よしよしと縺れた髪を愛おしげに撫でた。 「かわいいね。我慢させちゃったし、ここでたくさん気持ちよくなっていいから」 「っひ……!」 抜かれた指の代わりに熱いものを押し付けられ、濡れて柔らかくなった入口がくぱくぱと口を開ける。軽く吸い付かせるように具合を確かめてから、火野がゆっくりと背に覆い被さった。ここ最近で知り得たばかりの重みに、ぎゅっと胸が甘く締め付けられる。 「力抜いて?」 「ぃ、あぁ………っ」 ずん、とめり込んできた灼熱に、入口の縁がぴりっと痛んだのも束の間。張り出した先端をぐぽりと呑み込まされ、手前の敏感な粘膜をわざとらしく擦られる。そのままずぷずぷと残りを沈められて、物欲しそうにうねる筒を我が物とせんばかりに穿たれた。がりり、とソファカバーに爪を立てようと、熱と摩擦による快感は刷り込まれるばかりだ。 「ひっ……あ、ぁはあっ、だ、めっ、こ、なの……っ」 火野のものがどこに触れても気持ちよくて、腹の奥から入口までがきゅんきゅんと歓喜に震えてしまう。 髪の先に口づけられながら、じんじんと熱を持った粘膜を擦り上げるように突かれて、深く咥え込んだものをきつく締め上げる。が、その締め付けを意に介さず、更なる勢いをもってずんと奥まで嵌め込まれた。重い一撃にぶるりとのたうった肢体が卑猥だ。 「ぅ、あぁ……! おく……っ、やぁ…っ」 「奥がいいの?」 「ちがっ、も、はいらな……っ」 「? まだ入るけど」 「う、そ……っ、や、っ」 もう十分に満たされているのに、これ以上を受け入れては体がどうなるかわからない。もちろん、普段だってひと息で全てを埋め込むような真似はされなかったが、今日は半ばまで呑み込んだだけでもきゅうきゅうとはしたなく熱をせがんでいる状態なのだ。 (こんなの、絶対おかしい……) 肌を重ねる程に、苦痛は減り、快感は増し。体が行為に慣れて始めているのも事実だが、そうなるようにと火野が着々と布石を打っているような気がしてならない。 「っ、あ……!」 みっちりと咥え込んだものを少しだけ引き抜かれ、内壁を嬲られるぞろりとした摩擦に身悶える。それを再び、やや勢いを持ってまっすぐに穿たれた。 →next ×
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