| 春の夜(裏) ひのてんR18 |
「僕だって気持ちいいよ。でなきゃこんなふうにならないでしょ？」 「っあ……！」 硬くなったものを勢いをつけて突き入れられ、びくんと腰が浮く。ね、と頬や額にキスを落とされて、胸の中にじわりと温かなものが広がっていく。 たとえ――たとえ、その眼差しが嘘であったとしても。心を支配された存在からこんなふうに愛されて、ときめかない人間などいない。初めて見た、熱を帯びる彼の瞳に、泣きたくなるほど幸せを感じてしまう。 「でも、そんなこと考えられないくらい、もっと気持ちよくしてあげるから」 「へ……？ あっ、」 深くまで埋め込まれていたものをいきなり引き抜かれ、ぱくぱくと入口がひくついてしまう。粘膜が寂しげに震え、中途半端に高められた体温が侘しくて。 最小限の力によって体をころんとひっくり返され、ふかふかの枕が顔にめり込む。驚く間も与えられず、下腹部とシーツの間にもうひとつの枕をぐいと押し込まれた。 「なっ、あ、これ……ぁ！」 腰だけが上がるような体勢に、かぁっと頭まで血が上る。すかさず膝同士をくっつければ、ぐにっと肉を割って開いた入口に熱い先端を押し付けられる。ちゅう、と吸い付くように反応してしまうのが恥ずかしくて、堪えきれず枕に顔を埋めた。 「ほら、脚開いて？ これじゃ入らないよ？ たぶん」 「ん、ん……っ」 すっかり力の抜けた体は、火野の手が内腿を外側へ押し出すと、ぱっくりと簡単に入口を晒してしまう。男のものを一度咥え込んだ場所はどれだけ卑猥になっているのか。想像するだけで、腹部の下の枕をうっすら濡らしてしまった。 「かわいいよ。中も見せて」 「んうっ……！」 くぱぁ、と震える入口を指で広げられ、ひやりとした外気が粘膜に触れる。そんなところばかりじっくりと見られたら、内部が物欲しげにがうねっているのが一目瞭然だ。満足そうに微笑んで、火野は再び熱を宛てがった。 「もう遠慮しなくていいよね？」 「んっ、んん―――！」 甘く歯を立てられた耳に気を取られ、ずぶずぶと押し入ってくるそれを止められなかった。先程よりずっとスムーズに入り込んだそれを、肉の襞がぎゅうと締め付けて離さない。ぴったりと密着したところをゆっくりと揺らされ、熱に触れた場所すべてを優しく嬲られた。 「んうぅ……っ、ふ…っ…！」 ぬぷん、と突き込まれる度に奥を少しばかり進められ、僅かな恐怖と新たな快楽の予感にビクビクと尻が跳ねる。腰を回され、深めの場所をぐるりと掻き回されて、痺れるような疼きが脳髄まで到達する。 中心の昂りから溢れたもので枕が濡れそぼると、振動に合わせてぐしぐしとそこを擦り付けてしまった。前も後ろも果てしなく気持ちよくて、頭がおかしくなりそうだ。 「さっきよりもいいんだね。てんこの中、すごく締め付けてくる」 「ん、ふうぅ……っ…」 背中に覆い被さるようにして、耳元で卑猥な台詞と共にたっぷりと濡れた吐息を吹き込まれる。ぶるりと背筋から腰を駆け抜けた快感は最奥に帰結し、その余韻でまた彼のものにきつくしがみつく。 「奥、痛くない？ 入れても大丈夫かな」 「んっ、あ、ぁあ―――っ」 両手で腰をがっちりと固定されて思わず顔を上げた途端、内壁全てを擦り上げる勢いでずんと奥まで満たされる。疼き出す襞をぐりっと抉られ、頭が一瞬真っ白になってしまう。 「だ、だめ……っ、こんな……んんーー！」 反応のいいところをぐにぐにと捏ね回され、小刻みに腰が揺らめく。いったん抜いて、また奥まで埋めてを繰り返しながら、締まる頻度が徐々に高まっていくのを火野が嬉しそうに指摘した。 「だめじゃないでしょ？ ほら、きゅーってしてるの、わかる？ ――ここで、」 ここ、と火野の手が枕と体の間に侵入し、べっとりと汚れた下腹部を優しく撫でる。内外で同時に触れられる感覚に、ぞわりと全身の皮膚が粟立った。 「ここで、ちゃんと僕とひとつになってる」 「っ―――！」 きゅうう、と存在しないはずの器官が体内で収縮した気がする。耳をねっとりと舐められながら、とん、と彼の腹部が当たるまで奥に沈められて。その熱を搾り取るが如く、内部のうねりが激しくなる。もう自制なんか効くはずもなかった。 「かわいいね」 「ひっ―――あ、ぁあ…っ」 掠れ気味の低音で囁かれてから尻を持ち上げられ、入口から奥までを一気に摩擦される。たん、たんと尚も腰を打ち付けられて、奥の粘膜がちゅうちゅうと何度も先端に吸い付いていく。 「やっ、そんな…っ、それ、ぅあぁ……っ」 「中、とろとろになってるよ。欲しくてしょうがないって言ってるみたい」 「う、そ……っ、んぁっ、やだっ……、また……ぁっ」 奥の方へ吸い付かせては離し、吸い付かせては入口まで引き抜き、浅い場所にあるしこりを通過点として擦り立てる。きゅうと狭めた粘膜を掻き分けて抉られれば、枕に擦り付けたものがビクビクと震えて蜜を吐き出す。 「そ、なっ、うごかな……っ」 「僕、あんまり動いてないよ？ てんこがほら、枕にかわいいところスリスリしてるからでしょ？ …ふふ、べとべとにしちゃって。いいね、そういうの見てると興奮する」 つつ、と火野の指先でなぞられたものはすっかり張りつめ、潤んだ先端を戯れにくすぐられるとビクンと上体が浮き上がる。迫りくる絶頂の大きな波に恐怖さえ覚えた。 「やっ、さわらな、で……っ、また、ぁ……！」 「ん…限界なの？ いいよ、イっても」 直接的な言葉で促された後、汗ばんだうなじを舌で舐め上げられる。ちゅ、と吸い付かれたかと思えば、優しさをかなぐり捨てた強さで奥をずんずんと貫かれた。 「ひ……っ、んぁっ、も、それ……ぇっ」 自らの吐き出したものでどろどろに濡れた枕の繊維へ、腰をかくんかくんと揺すって擦り付けながら。浅く深く、ぐちゃぐちゃにとろけた体内をめちゃくちゃに突き上げられた。 「んぁっ、や、ばい……っ、も、そんな…あ……っん、んん―――っ！」 理性の糸が灼熱に炙られてぶつりと焼き切れる。腹の中で蟠っていたものを、奥から押し出されるようにして外へ吐き出した。 枕をきつく握り締めて生地へ噛み付けば、寸前で留められた甘い嬌声が喉を焼く。一度目の絶頂よりもさらに深く、ビクビクと余韻にさえ震えながら、指先すらも動かすことはできなかった。 「大丈夫？」 「っ、ふ………っ」 つーっと背中のラインを辿るように、長い指先が悪戯に走り抜ける。ぴくりと身動いだ体を労るためか、埋め込まれたままのものを火野はゆっくりと抜き出した。 「ん、んっ……」 ずるりと内壁を擦られる刺激に、枕へしがみついて溢れかけた声を堪える。再び体を反転させられ、汗で貼りついた前髪を優しく掻き上げられた。 「汗、かいたでしょ」 ちゅ、と剥き出しの額に唇が落とされる。そのまま顔の位置を戻し、おでこ出てるのかわいいね、と笑う。その辺りでようやく瞳の焦点が合致した天子は、珍しく露わにされた彼の首筋にそっと指を伸ばした。 「ん……？」 ひたりといくらかの指で触れた場所は仄かに湿っていて、ふわふわとした頭の中で、その事実は少しずつ驚きに変わっていく。 「あせ……」 「汗？」 「……かいて、る」 いつでも制服をきっちりと着こなし、頭の天辺から爪先まで一部の隙もなく、飄々と微笑んでみせる優等生の彼が。欲のままに乱れて汗をかくこともあるなんて、天子は想像すらしなかった。 頼りなさげな言葉に火野は小さく笑って、そうだよ、と自らの髪もざっくりと梳いた。上気した肌と併せて、視界を陣取る姿は堪らなく色気があった。 →next ×
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