春の夜(裏) ひのてんR18 |
「我慢してるの? ここ」 「え、ちょっ…… ん、んぅ…っ…」 ベルトのバックルを外し、ウエストを緩めてスラックスを腰から下ろす。下着の色が変わるほど濡れそぼったそこを、根元からつつっと指先でなぞり上げた。触れたり吸ったりのキスを唇で数えながら、下着の中に手のひらをゆっくりと潜らせる。 「こんなに濡らして…」 「ち、が……っ、あ、あっ」 下着を引いてずり下ろし、とろとろと蜜を垂らしたものを優しく包み込む。きゅっ、と括れを締めるように握り込まれ、喉の奥から甘い響きがこぼれ落ちた。 「せんぱ……っ、ぁ、あっ、やめ……」 溢れ出る蜜を塗り込めながら、先端の窪みを指の腹で抉られる。自分で処理している時はおろか、女の子と触れ合った時でさえ、こんなに乱れたことはなかったはずなのに。 自我が保てなくなるほどの鮮烈な快感に、天子は恐怖さえ覚えながら、それでも本能で腰を揺すってしまう。とろりとした蜜を絡めて扱かれたり、小指から順番に力を入れて絞るようにされたり。中途半端に開かれた腿が、絶頂の兆しにぶるぶると震える。これでももう、かなりの波を堪えてきたのだ。 「あ……っ?」 不意にすっと濡れた手を離され、寸前でお預けを食らった天子ははーっと荒い呼吸で目を見開いた。 「まだだめだよ。ここで」 「っひ……ん」 ここ、と根元からさらに奥まった場所を指先がたどる。怯えたような高い声を発して、天子はぐいと丸めた手を口許に押し付ける。そこは嫌だと言いたくても、またあられもない声を上げてしまっては説得力など皆無だ。吐き出せない熱は腹の中でぐるぐると渦巻き、脳味噌が沸騰しておかしくなりそうだった。 「ここで、ちゃんと気持ちよくしてあげる」 蜜にまみれた指先がくるくると窄まりを撫でた。快感より違和感が勝っている。今なら何とか話せるだろうかと、天子はそっと手を避けた。 「あ、のっ……、そこは……んぁっ」 ずぷ、と濡れた指が一本だけ押し込まれ、快感とも不快感ともつかない衝撃に天子は胸を反らす。 このまま火野に犯されるのだろうか。人より痛みに耐性がある方だとは思うが、未開の場所を好き勝手に痛めつけられるのはいくら天子でもやはり怖い。 だからといって、今更嫌だと言ったら火野はどうするのだろう。帰れとそっけなく促されるか、激昂して無理に犯されるか。 そんな思いもまた、新たな快感に押し流されていく。 「ん、あっ……んぐ……っ」 「おや、我慢しちゃうの? そのままでいいのに」 滑りを含んだ指をぬぷぬぷと前後に動かしながら、火野は開かれた腿の内側に吸い付いた。薄く筋肉を纏った脚でも、内腿は特に柔らかい。そうして限界に程近い場所をちゅっちゅっと吸われ、忘れかけた快感がじわじわと蘇る。 陽光を燦々と浴びたアイスキャンディの如くたらたらと蕩けたものを、火野は舌を覗かせて、根元からゆっくりと舐め上げた。 「んっ、や……っ、きたない、ですから…っ」 この時ばかりはさすがに、天子も頭を浮かせて詰まった声を発した。 「汚いと思ってたらこんなことしてないよ」 「は、やっ……あ、ぁ……!」 裏側を焦らすように辿られ、指を食んだ所をきゅうと締め付ける。その指も焦れったくなるほどゆったりと引き抜き、差し入れては引き抜くを繰り返す。潤いが足りなくなると花芯を撫でて蜜を塗り、再び後孔に咥えさせる。 異物感がだんだんと痺れに似た感覚へ変化すれば、火野もより敏感な方へ舌を這わせた。括れた所を優しく食み、とろつく先端を柔らかな口腔へ含ませる。 「っ! やっ、だめ……っ、そ、な……っ」 深く唇を合わせた時と同じように、器用な舌先がつぷつぷと弱い場所をつつく。ねっとりと舌を絡ませ、吸い上げられると腰がビクビクと跳ね上がった。視界がじわりと涙で歪んでいく。 「はぁあ……っ、あ、も、だめ……そっちも、んぁ……っ」 いつの間にか二本に増えた指が、くぱっと内部で開かれて後孔を広げる。かと思えば引き抜かれ、その指で花芯とひくつく孔の間の会陰をトントンと優しく叩かれれば、壁の奥に存在するものがきゅんと疼いてたまらない。 根元をこすこすと扱きながら喉奥の辺りまで自身を呑み込まれ、絶頂の兆しにがくがくと体が大きく震える。襞を分け入った指が、外から刺激されたしこりを撫でる動きに変わる。口腔から自身を抜き出され、体の内側を指の腹で幾度も押し上げられて、天子の濡れた瞳がどろりと溶け出した。 「ひっ、あっ、も……、やぁ、んんーーーっ!」 脚を突っ張り、ぐんと腰を突き出して、堪えきれず絶頂を駆け上がる。我慢に我慢を重ねた末の放射はなかなか終わらず、大きな手で絞り上げられるままに何度も精を吐き出した。 腰が、頭が、おかしくなりそうなほどの快感。小刻みに震えながら余韻に感じ入る天子の髪を、前からゆっくりと掻き上げて火野は唇を落とす。 「んふ、ぅ……っ、んん……」 達したばかりで全身が敏感になっているのか、舌先だけをちろちろと弄ぶと自分から舌全体を差し出してくる。舌を絡め合わせ、まだ受け入れたままだった後孔の指をくぷくぷと奥まで埋め込んだ。 「んうぅっ……ぁ、はぁ……!」 「慣れてきたでしょ?」 指で届く限界まで、未知の場所を暴いていく。腹側に膨れたしこりを乱暴に突くことはせず、ただゆったりと撫でてやるだけできゅうと内壁が締まる。 「てんこはやっぱり覚えがいいね。ここで気持ちよくなれるんだから」 「や……っ、ちが、そんな……あぁっ」 潤いでふやけそうな二本の指をぬぽっと抜かれ、天子ががくんと仰け反る。火野は両手で白い腿を抱え、かぱっと脚を開かせた。柔軟性に秀でた体はあっさりと全てを差し出してしまう。あまりの羞恥に、さっと天子の頭に血が上った。 「違うの? ほら、ここはこんなに欲しがってるのに。ヒクヒクしてかわいいよ」 「やあ……っ、みない、で、くださ……っ」 喪失感にわななく後孔は咥えるものを求め、蜜をこぼしながらひくついている。そこも、既に頭をもたげている中心も、火野の素の瞳にじっくりと晒されていて。先端から新たな欲望が、たらりとひとしずく流れていく。 「恥ずかしいの、好きなんだね。ほうら、飲んでいいよ」 「あっ、ぁっ……」 すっかりほぐれた場所を、くぱぁ、と外から両の親指で開かれる。内壁がてらてらといやらしく光り、まるで呼吸するようにうねっていた。滴り落ちた蜜は根元から膨らみを流れ、口を開けて待つ後孔をしっとりと濡らしていく。その様を見つめながら火野は微笑んだ。 「僕は合意のないことは嫌いなんだよ。だから、欲しいって言われるまでは、何もしないであげる」 自分は何か、彼を怒らせるようなことをしたのだろうか。溶けたキャラメルの如き脳味噌で考えようにも、理性はとっくにどこかへ霧散していった。 頬を撫でる大きな手を、爪まで立ててしっかりと掴んで。整い切らない呼吸の合間で、彼を求める言葉を喉から絞り出す。 「っ、て……」 「ん?」 「して…っ………、して、ください…」 優しい眼差しに、心までとろけてしまう。 少なくとも今だけは――この目は、この人は、自分だけのものだと思いたいから。 →next ×
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