serum
ひのてんR18

「ここの力を抜いて。何も考えなくていいから」

「は、っん、ん……っ」

髪に手を差し込んで唇を宛てがえば、彼は素直に応えてきた。触れたり吸ったりのキスを数えていると、体の重みが自然と膝の上に落ちてくる。次第に腰が沈み込み、内部を擦り上げる刺激にビクビクと彼の全身が慄いた。振りまく吐息で僕も埋まりそう。

「いい子だね」

みっちりと咥え込んだ入口をなぞって囁くと、内壁を狭めて律儀に反応を返してくれる。隔てるものが何もないおかげで、粘膜の熱さも直に伝わってきた。この子はやっぱり体温が高い。

「動いていい？ それとも、自分で動く？」

「っ……」

小さく息を詰め、彼はきゅっと唇を結んで腰を揺すった。ゆすゆすと身動ぐように前後したのち、恐る恐る腰を浮かせれば中のものが僅かに抜き出される。それをまた狭い筒で咥えては、きつきつに締め付けて。

「っあ、ん……っ」

しがみついたまま、呑み込む圧迫感と抜き出す喪失感、熱と摩擦の快楽をその身で必死に受け止めている。敏感な場所に先端が押し当たる度にはくはくと口を開けて、中心からとめどなく滴らせているところを見ると、ギャップなんて言葉では言い表せない何かが憑依しているような気持ちになる。
初めて体を重ねた翌日、彼がこちらを見もしないままぼそりと呟いた台詞を覚えている。『別人かと思った』って。どういう意図でそう評したのかは訊かなかったけど、自分ではそれほど変わらないつもりだったから驚いた。他の人には、自分が思っているような自分には見えていないのかもしれない。きっと僕のことを一番理解してくれるだろう彼がそう言うんだから。

ーーでもね、君だって同じだよ。

普段誰より男らしくあろうとする君が、男に跨って媚びる姿なんて誰が想像できるかな。

「ひっ」

むずむずと落ち着かない腿を掴んで下から突き上げると、角度のせいか思った以上に奥を穿ってしまう。ああ、痛かったかな。そっと表情を窺えば、ぽろぽろと涙をこぼして今当たった場所に腰を押し付けてきた。痛くはなかったみたいだけど、指で届かないそこはさらに狭くなっている。
隘路にぴったりとくっつけて腰を回すように捏ねれば、耳元で悲鳴じみた嗚咽が響いてちょっと興奮した。

「気持ちいいの？」

滑りをまとった先端で、襞状の粘膜を抉じ開けようと体を揺する。引っ掛かるような、そうでないような不思議なところを何度も擦られて、彼は泣きながら僕の頭を抱え込んだ。ここでもきちんと快感を拾えるようになったんだね。ずっと奥にある、無理に貫いてはいけない場所がびくびくと誘うように吸い付いてくる。
恍惚に溺れきった瞳を覗き込むと、小さな舌をぺろりと覗かせて唇が重なった。

「んっ、ん……っ」

口づけがほどけない程度に緩い律動を送り込む。縺れる舌と同様に絡まってくる粘膜を掻き分けて、彼の内部を好き勝手に蹂躙する。指で触れた際の弱点をわざと掠めたらまた噛みつかれた。痛覚は鈍い方だけど、そろそろ血の味がしそう。

「やっぱり寝室に行かない？」

ひりつく舌を繰って囁く。ソファの狭さも悪くはない。でもこちらが優位に動くにはスペースが足りない。
柔らかい股関節をもぞもぞと後退させ、彼は恥じらうように頷く。双眸は欲に濡れて、成長期の体とはあまりにもアンバランスな厭らしさを醸していた。



「い……やっ、見、んな……ぁっ」

Tシャツ一枚の体をシーツに俯せて、腹の下に枕を宛てがう。今し方まで男を受け入れていた場所を、両手で割り開くようにして。親指をぷちゅりと浅く含ませれば、爪先が幾度もシーツを蹴った。

「可愛いよ」

きゅっと清楚に閉じていたそこが僅かに広がり、ひくひくとわななく様子につい相好が崩れる。男のこんなところを凝視したって興奮するわけないと思っていたのにね。
指で探れば甘えるような音を立てるし、なだらかな腰のラインはきれいに反って、引き締まったウエストと太腿に続いている。水と熱を豊富に含んだ肌も、しっとりとして触り心地がいい。女の子とはまるで違うけど、強くて滑らかなこの体には触れていたいと思う。腰骨に口づけて、首筋まで骨をたどりながら痕を残した。
それだけでも堪らないようにくねる腰を捕まえて、先端を入口に押し付ける。

「ん、んん…っ…！」

枕に突っ伏したまま少し苦しそうに、けれど気持ち良さそうな吐息を漏らして彼が震えた。膝で前進しようとする体を押さえ込み、お世辞にもきれいとは言えない音を遠慮なく奏でて繋がる。焦らされた末の刺激にびくびくと呼応する粘膜を、ゆっくりとした動きで責めていく。

「ぅん、んっ、んぐ……っ」

とろけた内側はさっきよりも熱い。下腹を覆う枕にもぽたぽたと垂れているし、たぶん後ろからされる方が好きなんだと思う。僕も動きやすくて助かるけど、呼吸を妨げてまで声を抑えなくてもいいのに。
ほんのりと赤らんだ耳に歯を立てれば、奥の方がまた吸い付くように反応した。もう痛くはなさそうだから、ずるずる抜き出しては深く突くのを繰り返す。突き当たりに近い場所をトントンと優しくノックする度に、彼のものが振動に合わせて蜜を迸らせた。

「ん……ぅっ、んっ、ふうぅ……っ」

逃げられないよう覆い被さって耳をねっとり舐めれば、ぐりぐりと額を枕に擦りつけて嗚咽をこぼした。小刻みに収縮する内壁が、快楽の在処を正直に教えてくれる。

「んっ、ぁ！？ んんっ、あ、だめ……だっ」

律動を速めると即座にかぶりを振って、くぐもった嬌声を落としている。ほんの悪戯としてシャツをまくって、背中の真ん中をつうっと指でたどってみたら内部がきつく締まった。ちょっと面白かったから、火照った背中に僕の名前を平仮名で書いてみる。

「っん、ん……、なに、してっ…」

「なんて書いたかわかる？」

「知、るか……っ」

律儀に悶えながら睨んでくるのがちょっと可愛い。急かされる前に抽挿を再開する。

「は、あ……っ、もう…っ…、んんっ」

中途半端に上り詰めていたせいか、刺激に少し安堵したみたいで声を殺そうとはしなかった。
本当はわかってるんだ。こんな時間に押しかけてきた時点で、きっとめちゃくちゃにして欲しいんだってことは。

「っあ、ぁ……っ、や、つよい、から……ぁっ」

潤滑剤の滑りに助けられつつ、腰を掴んで浅く深く貫くと涙混じりに上擦った声が響く。入口から奥まで擦られた内部がぎちぎちとうねって、男でもこうなるんだっけ、と人体断面図を脳裏に描いてみる。
明確な性感帯の他、どこが感じるかなんて人それぞれとしか言いようがないんだけど、この子は敏感な方だ。せっかくこういうことをしているのに気持ちよくなってもらえないのは寂しいから、僕もある程度は度々揺り起こしたよ。ただ、開発と称するほど教え込んではいない。素質って言ったら怒られそうだから黙っておく。

「ひっ、ぁあ……っ」

お腹とシーツの間に挟まった枕に、どことは言わないけどゆるゆると腰を押しつけてる。止めを刺すように、一際奥の粘膜を抉りながら首の後ろに吸い付いた。

「ぁっ、あ、ーーーーっ！」

体の一部がきゅうきゅうと引き絞られる感覚に、目を瞑って息を詰める。声にならない声を枕に撒いて、組み敷いた体が幾度も大きく震えた。
刺激にならないよう殊更ゆっくりと抜き出す。人間として危ないくらい脈が速い。

「っん、ん……」

「ん？」

緩いシャツの襟元から露出した肩まで真っ赤だ。何かもごもごと言って身動ぐ彼を、そっと仰向けて声を聞く。顔を腕で隠したまま、『なんで』と口走るのがわかった。僕はまだなのになんで抜いたの、って言いたいらしい。

「ん、なに、ちょっ……」

半端にめくれていた彼のTシャツを首元まで引っ張って、さらに頭と腕を通して脱がせようとする。困惑しつつも協力を得てシャツを奪うと、一糸纏わぬ彼は気まずそうに、視線を部屋の隅へ投げていた。
ひとの体をこんなふうにまじまじと観察する機会はそうそうない。改めて見ると、この子はとてもバランスがいい。均整が取れていると言うべきか。一般的な男が憧れる体はもっと筋肉質だと思うけど、一般的な女の子が夢見る体はまさにこういうものじゃないかな。薄くしなやかな筋肉が乗って、程よく引き締まって、清潔で。なんで抱かれてるんだろうと、無礼かつ本末転倒なところに行き着く。

「……あの」

若干平静を取り戻した彼が焦れったそうに呟く。

「続き、やるならさっさと…」

「あ、ごめん」

君としては、冷静になる時間なんてないほうが望ましいよね。欲のせいにして、熱くなれる限界まで振り切ってしまいたいはずだから。
への字に曲がった唇にキスを落として、脚の間に体を入れ込む。びくっと緊張が走った腿を抱え、宛てがった場所に誘われるまま腰を進めた。もうさすがに狭さは感じない。

「んん……っ」

逆手でシーツをきつく握って、内部を開かれる刺激に甘い吐息が漏れる。わななく粘膜の歓待は、もはや自分でコントロールしてるんじゃないか、というほどの圧と動き。僕だからと思いたい。


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