赤司君と一緒


大学に入って初めて悪夢を見た。
私が殺された時の、前世の夢を。

前世の夢を見るのはこれが初めてではない。
幼い時から何度も何度も見ている癖に夢を見るたび優れない気分のまま一日を過ごすのが常なのだ。

私を殺した忌々しいあいつはわたしのことを恵美子さんと呼んだ。
まだ時間に私に恨みがあったとか、本当に私が目的ならこんなに気分が悪くなかっただろうに。
夢で私を刺した刃の感触が消えぬまま私は大学へ行く支度を始めた。

「おはよう。照子顔色が良くないね。何かあった?」

掻い摘んで説明する。

「おはよう征十郎くん。悪夢をみたの。」

「それはまた。どんな夢を?」

「殺される夢だよ。何度も見るからうんざりしちゃう。」

「そんなに何度も夢を見るくらい印象に残る夢なのか?」

前世で殺された時の夢ですなんて、言えるわけがない。

「そうだね。殺される夢だからっていうのもあるけど人違いで殺されちゃう夢なの。おかしいでしょ?
なんで私なんかと間違えるのかな」

「ふーん。それに何度も君の夢に出てくるくらいだ。案外人違いじゃないかもしれないな。」

「やめてよ縁起でもない。」

「それにしてもなんで人違いだってわかったんだ?」

「名前をいってたの。恵美子さんって。」
「そうか。恵美子さんね……」

「それよりも午後の授業の課題教えてよ。全然わかんなくって」

「いいよ。全く君は昔から英語の苦手な所全く変わらないな」

そうして赤司君は綺麗に笑った。

「しょうがないじゃん苦手なんだから。それに征十郎くんいれば教えて貰えるし」

「そうだね。照子は手がかかるからちゃんと教えてあげないとね」

「前はずっと私の後ろばっかりついて歩いてた癖にすっかりこんなになっちゃって。可愛くないなぁ」

「前?そんなことない。今もだよ恵美子さん」

その後のことは覚えていない。



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