あかしくんとおままごと


あかしくんとおままごと


正直死ぬかと思った。

目覚めた時一番最初に聞こえた音もやはり征十郎くんの泣き声だった。
死ぬな死ぬなと縋り付く彼を必死で引き剥がす。
そう簡単に死んでたまるか。死ぬとしたら君のせいだよ征十郎くん。

やっと得た身体の自由を味わいながら、どのくらい気絶していたのか時間を確認する。
幸か不幸か、それほど時間は経っていないらしい。

「うっうぅ……しょうこちゃあああああん!しんじゃううううううう!」

「うん。ごめんねせいじゅうろうくん。なかないで!」

「わあああああああああん!!」

「しなないよ!」

反射的に言ってしまったがなんでわたしが謝ってるんだ。
ますます傍から見た図が征十郎くんを泣かしてるように見えるじゃないか!わたしが!
非常に嫌だぞこの構図。
お願いだから早く泣き止んでくれ。色々な意味で私が泣くぞこら。

「ねえせいじゅうろうくん!あそびにきてくれたんでしょ?じゃあはやくあそぼうよ!ね?」

「うわあああんあそぶうううううううう!ぐすんぐすんえぐっ」

泣くか喜ぶかどっちかにしなさい。

少々乱暴ではあるがその辺にあったティッシュを征十郎くんの顔に押し付ける。
あーあ。折角のおめめが、というか顔真っ赤だ。

「これでいいかな。ねえせいじゅうろうくん。なにしてあそびたい?」

「おままごとがいいぐすん。ぼくがおとうさんー!」

おまえは女子か。かくれんぼやった時あんなに楽しそうだったのに

「わかったよーわたしはなにすればいいの?」

「おかーさんやって!」

「わかった!」

道具を持ってきて迷わずそのなかから湯呑を出して一言征十郎くんが言った。

「かあさんや。ちゃ!」

どこの熟年夫婦ですか。
私てっきりもっとほのぼのとごはんですよーうふふーおいしいなーえへへーみたいの想像してたんですけど。

「ちゃ!」

「せいじゅうろうくんどこでそんなことばおぼえたの。」

「おひるにやってるどらま!」

そのあとねーおばあちゃんがなにものかにころされちゃったのがかなしいんだーと言った征十郎くん。
私はそれを聞いてああ、再放送のサスペンスか。と全てを悟ったのである。

その後征十郎くんはどろどろとしたおままごと、いや、サスペンスごっこを続行し、見事に探偵役を演じきったのである。



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