ふわり、
なぜだかよくわからない。
気が付いたら見知らぬ天井だった。
天井だけじゃない。
自分の事もよくわからない。
意識がふわふわしているせいではないだろう。
「…………」
参った。声まで出ないらしい。
「こんにちは。速水さん。」
ドアが開いて、現れたのは水色の頭の男だった。
「気分はいかがですか速水さん。」
そうか私の名前は速水というのか。
「そうか、声が出ないんですね。かわいそうに。」
ここはどことかあなたはだれだとか知りたいことが山ほどある
察してほしくてかれの服の裾を掴んでみたり、ペンのジェスチャーをしてみたが
「大丈夫ですよ怖いものはここにはありませんから。」
全く悟ってもらえなかった。
「速水さん。僕があなたの怖いものから守ってあげますから。
僕があなたを養って、つま先から髪の毛一本に至る隅々までお世話しますから。」
彼はそういって私を抱きしめた。
怖いものってなんだろう。
ふわふわとした意識の中で、もう少しだけこのぬくもりに身をゆだねていたかった。
ひんやりと存在を主張する足枷には気付かないフリをして。
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