黒子君と
時系列はあまり関係ないけど帝光時代
今日の貸し出し当番は私のクラスだったはずだ。
だから私は嫌々ながらもお昼ご飯を掻き込み、友人との談笑を惜しみつつ、早々に切り上げて図書室にきたのである。
しかしながら、相方が来ない。いつまでたっても来ない。
少しだけ感じる苛つきを抑えつつ、来週までに返してくださいねー推理小説はあっちの棚ですよーなどと生徒の対応をする。
愛想も優しさも感じられない態度だが、相手も貸出当番如きに愛想など求めていないのでこれでよい。
昼休みが終わりかける時間になり、続く放課後の当番の仕事ために貸出カードを整理して帰ろうとした。
いつもなら生徒が乱雑に置いて行くせいでぐちゃぐちゃなはずのそれが、綺麗に整頓されていた。
誰かが手伝ってくれたのだろうか。優しい人もいたものだ。
少しだけ気分がよくなり、上機嫌で5限に向かい、そのまま友人たちと6限、HRを受けた後、放課後重い足取りで図書室に向かった。
どうせまた相方は来ないのだろう。
たしか名前は黒…黒……黒田だった気がする。
放課後の貴重な時間。
部活に行った、もしくは帰ってしまったのだろうか。
私だって返ってパピコを貪りながらドラマの再放送を見たいというのに。
普段ならば、放課後は人が多い。
読書に勤しむ者、勉強する者、はたまた談笑する者。
だが、今日は人が少なかった。
今この時間は皆用事を済ませたようで、自分以外居なかった。
閉館時間まで後20分。
そろそろ施錠して帰ってもいいのではないだろうか。
もうどうせ人も来ないだろう。そうしよう。
そう思い立ち上がった時、
「もう帰ってしまうんですか?」
と声が聞こえた。
「ひっ!」
図書室に人はいなかったはずなのに!!
「閉館時間まで後20分も残っていますよ」
誰だこいつは。幽霊か何かか。
「貸出ですか?本を出してください。」
幽霊でもなんでもいい。早く応対して帰ろう。そして寝て忘れるんだ。
「違いますよ。僕は当番なので。昼休みも一緒に居たじゃないですか」
こいつ今何て言った。
「昼休み…!?もしかして君黒…」
「黒子です」
なんてこった
じゃあもしかして貸出カードの整理してくれたのも黒子君か!
「声かけてくれればよかったのに!!!」
勝手に怒って勝手に帰ろうとして馬鹿みたいじゃないか。
「何というかその、恥ずかしいというか、速水さんを見てたら声を掛けられなかったんです。」
なんて恥ずかしいこと言うんだこいつは
「恥ずかしいことを言わせないでください。」
恥ずかしいのはこっちだよ馬鹿野郎。無表情で言うな。
「あー……来週はちゃんと声かけてね。」
「……頑張ります。」
168時間分の心の準備
(まるで告白)
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