あかしくんとうで
前回までのあらすじ
素質ある征十郎くんに
おうまさんごっこを強請られる。
こいつはわたしに死ねと言っているのか。
「わたしがうまやったらつぶれちゃうよ」
「でもぼくいつもおとうさんとこのあそびしかしたことないからほかのあそびわかんない」
Mなのはあなただったか。
なぜおうまさんごっこオンリーなんだ赤司父よ。
キャッチボールとかしてあげてよ。
このままじゃいろんな意味であなたの息子が大変なことになりますよ。
「じゃっじゃあせいじゅうろうくん!ほかのあそびいっぱいおしえてあげる!」
「ほんとう?うれしいな。」
と、私はかくれんぼや鬼ごっこ、はたまたおままごとまで征十郎くんに教え込んだ。
彼は非常に聡明で、物事を難なく理解出来たし私も非常に癒された。
場面場面はやはり目力が凄かったが。
まあこれで彼は近いうちに入園するだろう幼稚園で同じ年の子と遠慮なく戯れることが出来るだろう。
そして走り回り疲れ切った私たちは眠気に誘われるまま二人並んで昼寝をし、あっという間に帰る時間になったらしい。
それぞれがそれぞれの親に起こされ、帰宅の旨を告げたところ、彼はぼろぼろと目から大粒の涙を零して泣き出した。
寝ている間に掴んだであろう腕をさらにがっちりホールドして。
可愛い子は何やっても絵になるな。
と私が全く関係のないことを考えている間に征十郎母からの彼への説得が終了し、名残惜しげに腕が離された。
「またあえる?」
「またきっとおかあさんがつれてきてくれるよ。ばいばいせいじゅうろうくん。」
「ばいばい」
今日一日で随分私は彼に懐かれたようだ。
誰かに好かれることは気分の良い事のはず。
その例に漏れず、私は上機嫌で帰路に着いた。
将来、彼が私の悩みの種になるとも知らずに。
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