私の服は呪われている


先に任務を済ませてしまおうと甲斐に付いた私は、前の様なか弱い旅人に変装した。
町人にさりげなく聞き込みをし、こちらの情勢を探るのが今回の任務だ。
普段恥ずかしがり屋の私にとって知らない人と会話するのは苦痛だがこれも仕事。
仕方がない。
か弱い旅人に扮した私は顔も別人である為正直まだこちらの方が堂々と人前に出られる。

変装し終わった部下の忍にも同じく聞き込み等の指示を出した後任務遂行のためにあらかた町人と世間話をした私は事前に下調べしてあった宿を取りに行った。
一人旅?たいへんねぇ。ええ、生き別れの弟を探すために…。あらまあ!
等と宿屋の女将に嘘八百を並べ無事に宿をとった私はまだまだ時間に余裕があるなと大通りに向かい歩き出した。

男が倒れている。

なんだ。
この格好は行き倒れを引き寄せる呪いでもかかっているのか。
しかし前回とは違い、城の目の前でもなければ安芸でもない。
面倒事に巻き込まれてしまっては厄介である。
ここは放置するのが賢明だ。
そう思い、無視して通り過ぎようとした私の足がしりとなにかがからみついた。

「は、腹減った……」

まさか意識があったと思わなかった私の過失だろう。
ピクリとも動かないし最悪死んでるだろうぐらいには思い込んでいた。
死の間際藁にもすがる人間はこれ程逞しいのか。
そう思わせるほど彼の腕力はすさまじく振りほどくにも振りほどけない。
周りに誰もいない事を確認し思い切り蹴りつけても効果がなかったうえにさらに強く掴まれる始末。

もう仕方ない。

「手を離してください。立てますか。この道を行って曲がったところにおそば屋さんに行かれてはどうですか。そこまで手をお貸ししますから」

それでも手を離さない男。

「……奢りますよ。」

「いっやー!お姉ちゃん気前がいいね!丁度有り金すられちゃってさー力尽きるところだったよ!」

さっきまでのぐったり具合が嘘のように男は立ち上がり私の肩に手をかけてべらべらと喋りだした。
ぴんぴんしてるじゃないかこの野郎!

黄色い大男
いますぐぶんなげてやりたい


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