あかしくんとそしつ


トイレットペーパーを巻き取る遊びを卒業した頃。

とある昼下りのことである。
私は母と共に母の知人宅にお呼ばれした。
今思えばこのとき、嫌な予感という自分の第六感を信じてぐずってでもなんでも行かなければよかったのかもしれない。

何故ならこの日、私の人生は大きく大きく斜め上へ進むことになるからだ。


「こんにちは赤司さん。」

「ええこんにちは。お久しぶりね。速水さん。まあ!照子ちゃんもしばらく見ないうちに可愛くなったこと!」

道中彼女とは赤ん坊の頃に何度もあっているのよなどと母に話されたが全く覚えていない。
今の私の心境はたまに会う親戚に会った微妙な気持ちとほぼ同じである。

「おかげさまで!征十郎君もきっと大きくなったんじゃない?」

「そうなのよ。これがもう生意気になってきちゃって大変。」

「あ、そうだ。ねえ照子ちゃん。」

要約すると遊んで来い、仲良くして来い、うちの征十郎をよろしく。まだ一人も友達が出来ないの。

だそうだ。

このときの私はまだ呑気に構えていて、泣かれたら面倒くさいな、とかどんな子だろう、とか考えていた。

いざあってみると征十郎君とやらはおおよそ幼児とは思えないような目力でこちらによちよちと迫ってくる。
目力以外はなんら他の子とかわらないふにふにとした可愛らしさで、顔なんかも非常にかわいい。
しかし目力。されど目力。

これじゃあ普通の子なんか寄ってこないわ。だって怖いもの。
おねえさんだってXX年生きてきたからこそ状況分析みたいなことしてるけど、同い年だったら泣く。絶対泣いて母に縋りつくわ。

しかし私は仲良くなって来い、遊んで来いのミッションを果たさねばならない。
今日私たちが帰るまで、泣くかはわからないが征十郎君を泣かせてしまっては確実に母に叱られるのは目に見えている。

「せいじゅうろうくん!わたししょうこっていうの!あそぼ!」

「いいよ!あそぼう!」

そういう彼の目は非常に輝いていた。
恐らく初めての遊び相手だろう私に向けて、それはもうきらきらと。
ずっとこれでいれば多分ほかの子も寄ってくるよ。
私も出来ればこれで居てくれれば凄く和むんだけどな。

「せいじゅうろうくんはなにしてあそびたいの?」

「ぼくおうまさんごっこやりたいな。」

「せいじゅうろうくんがうまさんになるの?」

この年からなんたるドМの素質だろうか。おねえさん心配ですよ。



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