私の主が天井を見つめていて気まずい


私は毛利元就様の忍だ。
つい先程も各国からもちを我が主にお届けする任務を言い渡された故無事任務遂行し、帰還したところ。

いつもは失礼ながら主様の元には天井から報告に行くのだが、
天井裏から顔を出すたびにしかめっ面をした主様からとてもありがたいお小言を言われてしまう。
顔を出すのも我慢してるのにと思うのはまた別の話として、
主様の機嫌をこれ以上降下させないためにも今日は床下から報告に参った。

参ったのだが、
恐らく私が来ると部下から聞いたのであろう主様が天井を見つめている。

天 井 を 見 つ め て い る の だ 。

きっと私がいつも天井から報告しに来ている習慣で待っているのだと思う。
しかし、今の私は主様から畳一畳分離れた床下に居るのである。
なんとなく出にくい。
というか主様は暇なのだろうか。
天井を見てるだけなんて傍から見たら隙だらけにしか見えません主様。
こういう風に主様を見るのはなんだか新鮮な気もするが、天井から来ることを期待しているのかとも思ってしまう。

今から天井裏に行こうか、しかし報告(餅)が遅れてよいものか。
いや、ここは報告(餅)を優先すべきだろうと私は床を軽く叩いた。

「主様。ご報告に参りました。」

以前は顔も出したくないと駄々をこねていたが、今は顔を出す程度にはなった。
これもひとえに我が主のせ……お陰だと思われる。
減給、忍頭降格なんて言われてしまってはしょうがない。
減給はまだしも忍頭降格なんてされてしまっては主様と直接顔を合わせる機会が減ってしまうではないか。
ついこの間までは天井越しで顔を合わせていたが。

「照子。声より前に顔を出せと何度言った。」

と、天井に向かって問いかける我が主。
そんなにもちが楽しみですか我が主。

やはり今、出るしかないのだろうか。
顔を出したところを想像すると気まずい。
とても気まずい。

しかし、主の楽しみにしている日ノ本の餅各種が固くなってしまう。
餅が固くなってしまうなら、出た方がよいだろう。


「主様……


こちらです。」

ガタタ

「……なんと。」

ああ我が主が動揺していらっしゃる。
表情はピクリともしないが声が上ずってらっしゃる。
そんなところも美しいです主様。
だがしかし気まずい。早くこの場から立ち去りたい。

「こちらが今回の任務の品にございます。」

「……わかった。」

「…………」

「…………」

沈黙が痛い。

「ほ、褒美にこの餅をくれてやってもよいわ。ありがたく食せ。」

そういうと主様は任務で持ってきた餅のいくつかを下さった。

「ありがたく。(主様がお餅をくれるなんて天変地異が起きるのではないだろうか)」

お互いしばらく目を合わせられません

頂いたこのお餅は家宝にしよう。



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