赤司君と青峰君
「なんでお前喋んねぇの」
こいつが喋った所殆ど見たことがない。
よっぽど必要なことじゃない限りはい、いいえの返答すらしない。
あなたは物好きね。目だけがそう語ってくる。
自分でもなんでこいつにかまってるかわからなかったが、いつだったか日直になった時。
初めてまともに速水と話した。
「もう仕事は終わってるから帰っていいよ」
それだけで特になんということも無かったがもう一度言葉を交わしてみたいと思い翌日話掛けに行ったがガン無視された。
ムキになって通い続けた。
周りには理解できないとか言われたが負けず嫌いの自分としてはどうにも負けた気がしてどうしても会話をしてやろうとしていたしどうにも速水に違和感なりモヤモヤなりスッキリしなかったのも理由の一つだった。
二週間程通い続けると喋ってはくれないがコミュニケーションくらいはしてくれるようになった。
かなりの進歩だろこれは。
「話せないってわけじゃないんだろ。なんでだよ。嫌なことでもあんのか?」
いつも通り独り言で終わると思っていた。
終わるはずだった。
「……………………から」
「えっ」
「赤司くんが嫌がるから」
知ってる名前が出てきて驚くことよりもそんな単純な理由だったことに呆れることよりも先に俺は
「(ああ、このモヤモヤはこれだったのか)」
と速水に感じた違和感はこれだったのかと妙に納得した。
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