赤司君と帝光
「照子も帝光にくるんだよね?」
私に拒否権などないことはこの9年間でよくわかっている。
気味の悪いほど頭の切れるこの小学生にドン引きしだしたこの頃から私には征十郎くんに逆らう気も起きずにただひたすら征十郎くんを受け入れて征十郎くんに流されて生きていた。
「うん。帝光にいくよ」
「それはよかった。」
心配なんてしてないくせに。
きっとここでも友達ができることなんてないだろうな。
でももしかしたら、征十郎くんに屈しない友達が
淡い期待と諦めを胸に私は装飾された門をくぐった。
「これからも一緒に登校できるね。嬉しいよ。」
「そうだね。私も嬉しいよ。」
「征十郎くんはなんの部活に入るの?」
「バスケ部に入ろうと思ってるよ。」
「そっか。やっぱりもう決まってたんだね。私はまだ決まってないや。どれに入るか迷っちゃうなあ。」
「照子」
「なあに?」
「部活に、入るの?なんの部活に?なんで?」
しまった。
「照子はまた僕をほったらかしにするんだね」
どうやら彼の地雷を踏んでしまったらしい。
何年も一緒に過ごしているのに私のおつむは学習能力が低いようで情けない。
そしてやはり、中学でも私に友達を作らせる気は無いらしい。
「僕より部活の方が大事なのかな。それなら僕はとても悲しいよ。友達だと思ってたのは僕だけだったのかな。照子はなんで僕からそんなに離れたいの?僕は照子になにかしたかな?」
嫌われないのがおかしい位めちゃくちゃしてますけれども。
しかし征十郎くんの異常性が悪化しても私はすでにたった一人の友人に依存してしまったようで
「征十郎くんがそういうなら、」
もう手遅れかもしれない。
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