赤司君と違和感


放火があったらしい。

"らしい"というのは実際目の当たりにしていないからである。
火を放たれたのは夜中だろうと職員室で教師が話していたのを小耳に挟んだ。
犯人はまだ捕まっていないらしい。

私には犯人のおおよその見当がついている。
これだけあからさまなのだ。気づかない方がおかしい。

これはきっとメッセージなのだ。
自分から決して逃がさない。"現実逃避すらさせてやらない"と。

思えば昔から征十郎君はそうだった。
幼子とは思えない位頭の回転が速かったし、ことあるごとに私に執着してみせた。しかもそれは、年々加速している。

最初は、幼児特有の嫉妬や独占欲だと思ってた。
頭の回転の速さだってよくお話で聞くような天才なのだろうと軽く考えていた。
ああ、なんてことだ。
私を馬鹿だと罵ってくれて構わない。
気づくのが遅かったのだ。
否、
なあなあと長いものに巻かれるように今生を生きてきた私は見てみぬ振りをしていたのだ。

唯一の小さな友人を無くしたくなかったのだ。
たとえ征十郎君が邪魔をしていたとしても、一人だった私に寄り添ってくれたのは紛れもない征十郎君なのだ。

しかし図書室が彼によって焼失した今。
はっきりと認めざるを得なくなった。
彼は異常だ。
なにか、はっきりと表すことは出来ないなにか。
歯車が噛み合ってないような、パズルのピースを無くしたような。
そんな靄のかかった違和感を感じた。

きっと彼は放火の犯人として捕まることはないのだろう。
普通の子供であればすぐに捕まるだろうと考えるが、彼に関しては捕まらないと、直感が告げていた。

私は不思議と征十郎君から逃げようという気は起きなかった。
もっとも、逃げることも出来ないからだろうけど。


back




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -