赤司君と小学校


幼稚園を卒業し、なにごともなく小学校に上がって早二年。
初めて征十郎くんとクラスが別れました。
流石に泣くことは無かったけれど、放課後に家に遊びに来た征十郎くんが離してくれなかったのは記憶に新しい。

「休み時間遊びに行ってもいいよね?」

「もちろん!」

この二年間、幼稚園から持ち上がってきた子達の噂や征十郎くんが学校でべったりとくっついて歩き離れるそぶりをみせず、全く友達が出来なかった。
流石に焦り始めてきた私。
新たに変わるクラスで私は女の子の友達を作ってみせる。
おませな女の子の話の輪に入りきゃっきゃうふふと話す子達を眺めるんだと意気込み私は新しいクラスに溶け込んだ。
笑顔を作り積極的に女の子に話しかけ困っている子を見つければ助ける。
そんなざっくりとした地道な努力で私はついに友人を勝ち取ったのだ。
幼稚園から持ち上がってきた子はいまだに私に近づいてこないがこの際構わない。
小学生の底なしの体力にげっそりしつつも上機嫌で日々を女の子ときゃっきゃうふふと過ごす私とは反対に最近征十郎君のオーラがざわついているように感じる。
とげがあるというか荒れているのかなんなのか。
言葉づかいも微妙に変化しだしてきたのでとうとう反抗期到来かとも思われたが、放課後はいつものように

「名前ちゃん!遊ぼう?」

ときらきらとした目で誘ってくるので謎は深まるばかり。
さては学校で嫌なことでもあったのか。
4歳で幼稚園を支配した征十郎君にまさかとは思うが征十郎君遥かに凌駕する小学三年生もいるのかもしれない。
ここはおねえさんがひと肌脱がねばなるまい。
征十郎君は最近自分の家に私を呼ばず、私の家に来たがるので、

「征十郎君。今日遊ぼう?」

とこちらから約束を取り付けた。
いつもは征十郎君から誘いが来るのでこちらから誘ってきたことがうれしかったのだろう。

「うん!遊ぼう!放課後教室に迎えに行くからね!」

と言って華の舞うオーラを漂わせて予鈴と同時に帰って行った。


「ねえ、征十郎君。学校で嫌なことでもあったの?」

放課後家に征十郎君を呼んだ私は母から出されたオレンジジュースを手に一息つき、グラスを置いたところでそう切り出した。

「無いよ?なんで?」

きょとんとなにをいっているんだという表情で返され拍子抜けである。
何かを隠しているというよりも、本当に何をいきなり?と言わんばかりの表情である。

「最近ね。廊下ですれ違った時に征十郎君ピリピリしてたから。」

「なんだそんなことか。おともだちがたくさん出来たのはいいんだけどその分たくさん話しかけられるからちょっとつかれちゃったんだ。」

贅沢な悩みだとおもいつつそうなんだ。大変だね。と返す。
私の心配事が杞憂でなにより。
残り少なくなったジュースを飲み干そうとしたときにこにこと征十郎くんが問いかけてきた。

「そういえばしょうこちゃん友達つくるっていってたよね。友達できた?」

その問いに私も笑顔で答えた。

「うん。仲良くしてくれる子がね、二人出来たよ。」

「ふーん。そうなんだ。なんで?」

ジュースのグラスの氷がピシリと音を立てた。


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