あかしくんとそと


幼稚園の初日。
完結に言うと征十郎くんが幼稚園を掌握したらしい。
聞いている人はなんのこっちゃと思うかもしれないが私だって何を言っているのかわからない。

幼稚園の組み分けで私は征十郎くんと一緒のさくら組になった。
ほくほくとした征十郎くんを横に自己紹介や園の案内を終え、自由時間になった園児たちは、遊具やおもちゃ置き場、それぞれ好きなところに移動する。
そんな私も例に漏れず、大きな本棚の前に移動し、童話を物色しだした。
やはり先生の説明通りで絵本がよりどりみどり。
中には小学生用の児童書もあるらしい。
いい加減家の貧相な蔵書で満足できなかった私は在園中に読破を決めた。
わたしは活字に餓えていたのだ。

「しょうこちゃん。あそぼうよ。」

いつもならこの子犬の様な目には逆らえない私だが、餌を目の前にした私には効果なく、

「わたしはほんよみたいな。」

初めて代替案も妥協案も出さないまま征十郎くんに断りを入れた。
それはまずい事だったらしい。
サッと暗くなった目の色に自分の身を案じた私は、ここで初めて代替案を出した。

「せいじゅうろうくんようちえんであたらしいおともだちつくるんでしょ?いまのうちにいってきたら?」

と。
征十郎くんは心底どうでもいいとでも言いたげな雰囲気だったので正直断られるのではないかとヒヤヒヤしていたが、思いのほか彼はあっさりと引いて「わかったよ」と教室を後にした。
教室に残っていた園児たちは私を含めて5〜6人。
これで思う存分本が読めると、私は本の世界に没頭していた。
だから外でなにがおきてるかなんて全くわからない私には上手く説明できない。

お昼ごろだろうか。
幼稚園の先生がお昼御飯だと園児を教室に呼び戻し始めたあたりで、私は異変に気付いた。

なんか、騒がしくないか?

幼稚園であれば騒がしいのが普通だろうが、この騒がしさはおかしい。どう考えてもおかしい。
泣き声がするのだ。それも一人二人じゃない。

先生が必死に園児たちを宥めている。
もしかして外で何かあったのではないか。征十郎くんは?とあたりを探し始めると、征十郎くんはケロッとした顔で教室に入ってきた。
そんな征十郎くんを見て、さらに泣き出す子や怒り出す子が増えたが当の本人は全く気にせず至極なんでもなかったかのようにこちらに話しかけてきた。

「もうほんはいいの?」

「う……うん。いいの。」

「それよりも、せいじゅうろうくんなにかしってる?みんなすごくないてるから。」

「たいしたことないよ。みんなぼくにまけたのがくやしくてないてるんだ。」

本当になにをしたんだこの子は。


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