幾分か時が過ぎ、お腹の傷も大分治った。大きな声を出したり、派手な動きをしなければ問題はないらしい。

あれから色々考えたけれど、結局答えは出なかった。坂田さんのことだけ考えて職を棒に降ることも、坂田さんを嫌って刀だけを振るう事もできなかった。考えれば考えるほど私の思考はネガティブになって、自分は公私共に中途半端なゴミクズ野郎と罵るまでに至った。

「そんな私に、真選組に行けと…」
「そんな貴方だからです。何に悩んでいるかは知りませんが、陰の気に当てられても周囲が困りますから。己をゴミクズと言うのならば存分にゴミクズの掃き溜めに混ざってきてください」

これに概要は書いていますから、といつか私が副長に見せたように、局長が私に書類を見せる。私はそれを受け取り、ぱらぱらとめくる。

大まかな内容としては、江戸を護る二大警察として、より密接な関係を築くための計画だった。見廻組から隊士を真選組に派遣し、情報交換や意見交流を行い、時には任務にも同行。以前の事件で深まってしまった見廻組と真選組の溝を少しでも浅くしようと考えているらしいか、実際は互いの統制だろう。見廻組は相手の内部に入り監視をする。その間、真選組は人質を得るようなものだ。誰が考えたのかはわからないが、暫くは面倒事を起こしたくないという両者の意見が重なった結果なのだろう。

「なにせ他のエリートでは恐らく彼らと反りが合わずに、エリートを撒き散らしてしまいますから」
「エリートを撒き散らすってなんですか」
「その点、最近の貴方は怪我のせいか少しやつれて見えますし。いい刺激を得ると思って行ってくれませんか。貴方なら恥を晒すこともないでしょう」

貶してんのか褒めてんのかわからない。私は力なくわかりましたと返事をした。

真選組、か。

土方十四郎や沖田さんの顔が浮かぶ。皆、それなりに傷を負っていたはずだが、元気なのだろうか。安否が気になるところだが、怪我を追わせた側の組織など、向こうからすれば敵そのものだ。恐らく、相当嫌われているはずだ。真選組は女人禁制と言うし、様々な面からのバッシングや誹謗中傷は覚悟する必要がありそうだ。

書類を閉じて、部屋から退室する。真選組には明日からお世話になる手筈になっている。すぐに準備をしなければならない。

楽しみだとかワクワクだとかそういう感情は一切なかったけれど、私が行くことで見廻組に貢献出来るとしたらそれで良いとだけ思った。なにせ私は仕事に私情を挟んだ大馬鹿者、やれる仕事はやらなくてはならない。




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