「おい名字、薬寄越せ、昨日の飲みで頭痛えや」
「いやこれ私が生理痛用に買ったやつなんですけど…」
「知ってらァそれロキソヌンだろ、ロキソヌンは頭痛にも効くんだよ。お前が薬局行くっつって手間が省けたぜィ」

 パトカー車内。
1日に二回イメチェンを果たした副長が運転する後ろで、薬局の袋を漁る沖田隊長は心なしかイキイキとしている。殺害までは至らずとも憎き副長に一発かますことができたおかげだろう。

 あの後見事黒焦げになった私たち3人の怒りの矛先は沖田隊長に向かった。
そんな私たちを沖田隊長は素知らぬ顔で躱し、次第に事態は収束した。
「あーもう付き合ってられっか!」と万事屋さんはスクーターを走らせ、(多分パチンコ屋に)消えていった。
正直今回の件は万事屋さんはそこまで悪くないような気がするので、今度手土産でも持って謝罪と感謝の意を伝えようと思った。

「にしても土方さん、勘違いも甚だしいですぜぃ、このちんちくりんと旦那がデキちゃったなんて」
「ッチ…あいつらのアホヅラ見て思考が鈍っただけだ。そもそも、腹抑えてゲロ吐いて青白い顔してりゃ疑うだろうか」
「生理でお腹痛くて二日酔いでゲロっただけなのに…」

まさかこんなことになるとは。はあ、とため息をつく。
薬を買いに来ただけなのに疲労困憊である。沖田体調は知らぬ顔で私から水を奪い薬を飲む。

「これだから三十路手前で思春期拗らせてるやつはダメなんでさァ」
「ンだと総悟テメェ!」
「まあまあ…」

 また喧嘩が始まりそうな雰囲気をなんとかなだめる。運転中だからか、副長は舌打ちをするだけで場を収めた。
 薬が効き始めたからかお腹の痛みは大分マシになった。すこしお腹をさすっているとだんだんと眠気が襲ってきて、ああそういや飲み会の後でロクな睡眠を取れてはいなかったな、と考える。
まぶたが重くなるのを感じる。


「ま、生理痛に悩む部下をサポートするのも上司の勤めだ。ー止めてやってもいいんだぜ、10ヶ月くらい」
「……………やっぱこの職場やめよっかな」

目を閉じて意識を飛ばす。


やはり男というものはどうにもならない。棒と玉から出血すればいいのに。

ロキソヌンは万能薬であるのか





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