生理とは、子宮内膜の一部が出血を伴って剥がれ落ち、体外へ排出することである。その現象は、およそ一ヶ月を周期に女に地獄を見せる。生理、月経、女の子の日、レディースデイ?そんな呼び方をしている人間もいるだろう。だがそれは世間に生理というものを現象として表すための記号でしかない。

血祭り。それが生理の正しい言い方である。

 そもそも股から自分の抑制効かず血が流れ出るなんてちゃんちゃらおかしい。しかも出血だけでなく腰や下腹部に激しい痛みを伴い、ストレス、食欲不振、血行だって悪くなる。女として、将来子を産むために必要な工程?黙れ。いつ来るかもわからないタイミングのために、どうして毎月こんな逆らえない痛みに苛まれなければならないのか。
 男はこの痛みを知らずに一生を終えるという。自分たちの股にぶら下がる棒と玉を弱点だと言い、弱者の振る舞いをするが、あいつらの棒と玉は血を尿のように垂れ流すことはしないし鈍器で殴られるような痛みも与えない。そう考えると腹が立ってくる。私たち女が毎月痛みにあれこれ対策をしているというのに。

こいつら、男というものは。

「えー、先日起きた爆発事故の犯人だが、無事一番隊により確保された」
「なあ、昨日のハンサワ見たかよ?!」
「べえ返しの名言は震えたなー!」
「また、犯人だが他の攘夷志士との繋がりが強いと推測されておりー」
「アレ見ちまうと江戸の裏ってのも気になるわな!」
「ねェ聞いてる?流石にちょっと泣きそうなんだけど…」

わいわい、がやがや、局長である近藤さんの話なんか微塵も聞く気のないような騒ぎ方。近藤さんも近藤さんで少し涙目になってるし。威厳というものを微塵も感じられない。特に変わり映えもしない我らが真選組の日常。では、あるのだが。

「…お腹いたい」

 お腹をさすりながら呟く。この喧騒の中では誰の耳にも届いていないだろう。
 生理2日目だった。生理中には痛みが伴う。鈍痛が下腹部を襲う。しかもその鈍痛のピークは私にとっては2日目、つまりは今である。もちろん、生理の痛みには個人差が存在する。他の女性の痛みを体感したわけではないので明確には言えないが、私が毎月感じる痛みはひどい方だと思う。布団の中で1日を終えることだって少なくない。精神だって不安定になる。いつもは薬を飲めば痛みは収まりなんともないのだが、今朝は寝坊をしてしまい、飲むのを忘れていた。昨晩は屯所で飲み会があった。生理1日目なら、明日薬を飲めば問題ないと調子に乗っていた私は特に制限することもなくお酒を飲んでしまった。そんな二日酔いと生理が重なった状態で、まともに起きれるはずはなかった。

 そんなわけで、薬を飲まなかった今の私の体は最悪のコンデションである。畳の上で正座をするのも辛い。脂汗も出てきた。周囲の話し声が嫌に耳についてきて、男どもが話しを聞かないことで朝礼が長引くことに対して怒りがふつふつと湧き上がる。

「あーもう、トシ」

 近藤さんが涙を拭きながら横に座る副長の名前を呼ぶ。待ってましたと言わんばかりの表情をしている副長の手にはバズーカ。放たれる弾によって場が静まるのも毎日のことであった。
 しかし、今日の私はそれを許さない。いやだって、私は至極真面目にお腹の痛みを堪えて話を聞いているのに、騒がしい奴らとひとまとめにされてバズーカの弾を受けるなんて。
 カチ、とバズーカの引き金を引く。副長ではなく、私が。
私の前に座り居眠りをこいていた沖田隊長のバズーカを拝借させてもらった。ドカーン、と大きく響いた音が収まる頃には近藤さんや副長までみんな黒焦げな状態で、注目が私に集まっているのを感じる。

「てめぇ、何して…」
「すんません、本日有給いただきます」

 副長が何か言いかけていたような気がするが、私は早々にその場を離れた。



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