I who am stupid







レンに別れを告げた後、ミクオは音楽室へ寄ろうと足を運んだ。
この前まで、自分たちの音楽を、自分たちで奏でた場所。廃部になってから、絶対に寄りたくない場所だった。そこにはたくさんのものが詰まっていて、ミクオにとって軽音部は、あの最高のメンバーで作った音楽は、大きなものすぎた。大好きだったあの空間、今はない、あの空間、それはミクオを追い詰めるだけだった。
そう。
何故あの時、余計な口を出してしまったのか。何故あの時、出て行くルコを止められなかったのか。何故あの時、二人の喧嘩を抑えられなかったのか。
出てくるのは、その大好きだった空間を失うことになってしまった、自分の行動への後悔ばかり。
ミクオはいつしかその後悔に追い詰められ、決して自分だけが悪い訳じゃないと思う、思うのに、それがどうにもならないことだったとは到底思えなくて、仕方ないのだ。
いつも音楽室の前を通る度にその思いが込み上げてきた。いつしか避けるようになっていたその場所に、しかし今は自分から、足を運んでいる。

レンに全てを話したら、なんだか気持ちが軽くなったのだ。それはあまりに一方的な会話だった。会話にさえなっていなかった。けれどミクオには心を許せる友だちなどそう多くない。レンに全てを話したのは、自分を全く知らないやつだったからだ。
しかし、それだけではないのも、分かってる。ミクオが、勝手に、またしても一方的に思うだけなのだが‥、レンは、自分に似ていたのだ。
だから少し心を許した。音楽に対する姿勢を認めたわけではない。けれど、レンのその瞳と、言葉は、自分に似ていた、ように思う。

自分もつくづくバカだなあと思う。一つのバンドにあんなに固執して、プロでもないのに偉そうに音楽語って。

なんだか、受け入れられてきたのだ。いつまでもウジウジしていた自分を。バカみたいに思えるように、なっていた。
ミクオはなんだかんだいって、そうやって一人悩む自分が好きだった。他人と違う、ちょっと冷めた態度のクールな自分が好きだった。しかし音楽をやる時だけは、目一杯楽しむ、そんな自分も好きだった。
だから譲れない、くだらないプライドがあったし、いつまでもあの楽しかった時を追いかけていた。

しかし今音楽を語る自分は、どうしてこんなにも滑稽なのだろう。








歌声が、聞こえた。





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