groove






「まあ、それはお前らだけじゃなくて、色んなやつらに言えることなんだけどね」

レンは、ミクオのことを、いいやつなのかもしれないと思った。こうして思ったことをはっきり言って、へこんだオレを見抜いて立て直してくれる。厳しいのに、突き放さない。きっと、優しいんだろう。この感覚は、何度も感じたことがある。



「本当の理由はもう一つ。‥2年になった時、新しく1年が二人入ってきた。お前とタメだろ?、ネルとルコ。ネルが経験者で、ルコはまさかのプロ志望!あいつら超上手くてさ、しかもちょうどギターとボーカルだし、申し分ないわけ!で、即バンド組んだんだ」

ミクオは少し、笑った。

「もう、最高だった、最高のメンバーだと思った。オレの作った曲も気に入ってくれて、しかもどんどんよくしてくれる。あんなに楽しいセッションはなかったし、練習中にみんなで何曲か作ったりもした。ライブも何回もしたし、ファンもできた。すごく楽しい1年だったよ、初めて部活入ってよかったと思った。最高のメンバーに出会って、最高の曲作って、最高のライブして、オレ、このバンドで絶対プロ目指したいと思ったんだ」

それは、全てにおいて過去形であった。その、彼が楽しいと、最高だと感じた軽音部は、もう既に廃部となっているのだ。

「でも、それも1年で終わり。バンドなんて、主張強いやつの集まりだからさ、固いようで脆いんだ。ネルとルコの喧嘩から火が付いて、オレやミクもそれに口出して、余計に悪化。それが原因でルコが抜けて、人数足りなくて廃部。夢もろとも消えてしまったのさ」

ミクオから笑顔が消えた。



「バカだよなあ。喧嘩一つ引きずって、そのせいで夢も、楽しかった時間も無くしちゃうんだ。ネルとルコが意地っ張りでさ、なかなか元に戻らないんだ。でも、オレはやっぱり、あいつらが大好きなんだ。なんとかしてまた、あいつらとバンドをやりたい」

ミクオと目が合う。顔を上げないと視線が合わない。その見上げる身長に、歳の差を感じる。

(あ、オレはガキだな)

レンは、ミクオを大人だと思った。レンは、大人と接する時、いつも自分の子供さを感じ、惨めになる。年齢的なものも勿論あるが、その立ち振る舞いや考え方から来る根本的な何かが、人とは違うのだ。ちゃんと自分の意志を持ち、夢を持ち、それをしっかり行動に移せる人。
例えばアカイト。彼は自分が出会ってきた誰より、大人だと思う。レンはひっそり、アカイトに憧れている。
それで気付いた。さっき感じた感覚、あれは正しくアカイトに感じるそれと同じであった。

悔しいが、ミクオはなんだかアカイトに、似ていたのだ。



「だから、ごめん。オレは他のバンドに浮気することはできない」









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