a sound to convey






この歌声を、みんなに届けたいと願うリンに、バンドを組みたいと願うリンに、オレができることはなんだろう。
そんなの、そんなの簡単じゃないか!
リンとずっと一緒にいたくて、リンに喜んでほしくて、リンの歌が聴きたくて!
だったら、

「リン、バンドやろう!」





確かに考え足らずなとこはあったかもしれない。けれど、オレなりに考えて出した結論だ。
リンのためにギターを弾く!オレがリンのために出来ることはそれしかないのだ。ギターがあれば、そう言ったリンの言葉と、その酷く湧いてくる勢いと共に、オレは帰りにアカイトの家に寄った。リンが、リンが喜んでくれるなら、オレはなんだってできる気がするんだ。
「アカイトー、ギターくれ!」
「あ?なんだレン、お前ギターやんのか」
アカイトはオレを一切見ず、だるそうに返事をした。アカイトは幼なじみの兄ちゃんだ。隣の家のカイト兄ちゃんとイトコである。昔から二人には世話になっていた。小さな頃から音楽が好きで、けれど歌うことは好きでなかったアカイトは、歌うことが大好きなカイトのために、ギターを弾いた。オレはその間ずっと読書してたから、どんな曲だったかなんて全然覚えてないけど‥、とにかくオレの少ない人脈の中で、ギターといえばアカイトなのだ。
「やるやる、オレ、バンドやるわ」
アカイトはびっくりした様子でばっとこちらを向いた。まあ、分かる、分かるんだ理由は。オレはつい最近まで音楽に興味がある素振りを見せたことがないことはおろか、何事にさえ興味を示したことがなかった。そんなオレが今、ちょうキラッキラした表情で、バンドやる!なんて、昔から一緒だったアカイトにとっては衝撃でしかない。しかしそれも束の間、アカイトは嬉しそうに立ち上がり、ギターを出しはじめた。
「どれがいい?アコギはオススメしないから、エレキでいいよな」
「なんでもいいよ、ギターなら」
「おう、やれるのは三本くらいしかねーけど」
三本なんて充分だ!貰えるだけでありがたい!さすがアカイト、音楽のこととなるとやっぱ頼りになるなあ。そんなことを思いながら、出された三本のギターを見る。どれも形が違うが、さて、どれにしようか。
「どーせお前なんも弾けねーだろうし、オススメはレスポールだけど」
コードもろくに弾けないやつはこれで誤魔化しとけよ、なんて言われたが、そんな見たことない形のギターより、オレは、その隣の、ギターと言ったらこの形!な黄色のギターが気になって仕方ない。
「でもオレ、こっちがいい。こっちのがかっこいいもん」
それに、このギターなんだかリンみたいなんだ。光が反射して輝くその黄色のギターに、オレは釘付けになってしまう。
「あ?‥‥ああ、まあなんでもいいや。持ってけ」
ありがとう、お礼を言ってそのギターを手にすると、なんだか、ドキドキした。はじめて触る、これで音楽は作られるのか。このギターで、リンの歌を届ける。‥うん、素晴らしい。
「レン、ピック」
アカイトに渡された三角の薄っぺらなプラスチック。持ち方さえ分からないけど、それを使ってギターを弾くことくらいは知っている。
ギターを首にかけ、恐る恐るそのピックを弦へと近付ける。そして。
ジャーン
鳴り響くカスカスの、けれど、音。ワクワクした。だって、音なのだ。これがリンの声を乗せて、伝わるのだ、耳へ、心へ。



オレがそれを、奏でるのだ。







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