私には幼馴染みが1人いる。
保育園、小学校、中学、高校とずっと一緒で幼馴染み以上に思ったことなんて1度もなかったはずだった・・・今日までは。

『ロー早いよ!!』
「お前が遅いだけだ」

いつもと同じ通学路と幼馴染みの彼の悪態。
ローは成績優秀、運動神経も抜群でおまけに長身でイケメンと言う部類に属する。
だから、ローを狙っている女子も少なくない。
取り巻きの女子たちからしたら私は邪魔者でしかないらしくいじめを受けている。
最初はノートが無くなったり靴が隠されたりとか軽いものだったが最近はもっと過激化しており、自分のカバンが無くなったり机の中に噛んだガムのゴミが入っていたり。
けど私は気にしてなどいない。だって、気にしたら負けでしょ?

「今日は生徒会で一緒に帰れない」
『大丈夫!私一人でも平気だから』
「そうか」

素っ気ない態度、そう思うだろうけどローはこれでも心配しているのだ。
何年も一緒にいればそのぐらいわかる。
軽く微笑んだローの横顔に少し胸が締め付けられた。

授業の終わりを告げるチャイムの音が鳴る。
カバンを持って立ち上がるとオレンジの髪のクラスメイトが心配そうに話しかけてくる。

「マオ、今日1人で帰るんでしょ?大丈夫?」
『ナミちゃん、大丈夫だよ。もう慣れたから』
「すごく心配よ・・・・もし何かされたら言いなさいよ!!」
『うん!!ありがとう』

同じクラスのナミちゃん、ルフィくん、ウソップくんはイジメを受けている私を心配しいつも気にかけてくれる優しい人たち。
他のクラスのビビちゃんやゾロくん、サンジくん、キッドくんも勿論優しくしてくれる。
優しい友達もいるから何とかここまで乗り越えてこれたのだ。

下駄箱のドアを開けると、紙くずが大量に落ちる。
それを拾い上げゴミ箱に捨て、気を取り直しローファーを履く。
1人で帰るのは何時ぶりだろうか。

「マオセンパーイ!!」

後ろを振り向くと、キャスケット帽をかぶったシャチくんが息を切らしながら走ってきた。

『シャチくん、どうしたの?』
「ローさんが心配だから送ってやってくれって」
『ローが!?シャチくん家逆じゃない』
「大丈夫っす!あともう少ししたらペンギンが来ます」
『うーん・・・・やっぱり悪いから1人で帰るよ』

私は持ち前の逃げ足でシャチくんを撒く。
何か言っていたような気がするがまぁいいだろう。
外はもう夕焼けに染まり、日が傾き始めている。
早めに帰ろうと急ぎ足になった時、目の前に現れた2人組の男。
逃げようと後ろを振り向けばまた男が現れる。

「こいつが例の女か?」
「あぁ、違いねぇ・・・・上玉じゃねぇか」
「ヤッていんだろ?」
「あぁ」

私を舐めまわすような視線に吐き気がこみ上げる。
振り切ろうと走った時はすでに遅く腕を掴まれ口に布を当てられる。
意識が朦朧とする中見たのは男たちの歪んだ顔だった。


視界が冴えていく。
見覚えのある白い天井、これは自分の部屋の天井だ。
ぼうっとする頭で何も考えられずただずっと天井を見ていた。

「目が覚めたか」

幻聴だろうか。いつも嫌ってほど聞きなれた声が私の頭を覚醒させていく。
横を見れば近い、尋常じゃないほど顔が近い。整い過ぎの顔がすぐ横にある。

『ロー』
「心配させんな」

こつんとデコが当たり、視界いっぱいに広がるローの顔。
ドキドキと音を立てる胸が騒がしい。

「これ以上心配事を増やすんじゃねぇよ」
『ごめん・・・・』
「謝んな」
『う、うん』
「こんなに取り乱したのは初めてだ」
『?』
「お前を、マオをこんなに好きになるなんて思ってもいなかった」
『!!ロー!?』

ローの顔がもっと近くなり、触れる唇の温もり。

一線を越えて

(今日からマオは俺のものだ)


幼馴染から恋人へ
よくある話(笑)


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