01
ここは、秋島。少し肌寒いが気候は悪くない。ハナブサとタクトはこの島に滞在して3日になる。

『タクト、暇過ぎて死んじゃう』
「…と、言われても困ります」

タクトは困り果てていた。この島のログは1週間で溜まるのだが、娯楽施設が全くない平和な島。そして、滅多に海賊も訪れない為狩りも出来ないのだ。
自由奔放のハナブサにとってこの島は退屈で暇を持て余す。その我儘に耳を傾けるタクトに疲労感が襲う。

「(この人、俺より歳上なのに餓鬼っぽい)」
『タクト、今失礼なこと考えただろ!てか、腹減った!飯食いに行くぞ!!』
「そうですね。そろそろお昼ですから行きましょう」

2人は、宿から飯屋に移動した。ハナブサは昼間から酒を堪能し、タクトはチャーハンを口にした。その時だった。
店の外ががやがやと騒がしくなり、店のドアを勢いよく開けた男が叫んだ。

「か、海賊が来た!しかも、白ひげだぞ!!東の浜に停泊するらしい!」

ハナブサは、考え込んだ。確か、自分たちの船を停泊させたのは東の浜だ。もしかして…と考える前に体が動いた。

「ハナブサ!?」

タクトは少し遅れつつ後に着いて行った。
浜には大きな船が停泊していた。影からは聞いた町の住民立ちが様子を伺っている。
ハナブサは息を切らしながら船のそばに行くと案の定自分たちの船は破壊されていた。

『うぉぉぉぉおい!!!てめぇら、私の船をよくも藻屑にしやがったな!!!!!』

ハナブサは腹の底から振り絞り叫んだ。船に乗っていた男たちは顔を見せ、1人の変な髪型の男が降りてきた。

「あー、悪りぃねい。小さくて気が付かなかったよい」
『お前!それでも謝ってんのか!?』
「悪かったって、坊主。そんな怒るなよい」

男はハナブサの頭にぽんぽんと手を置いた。タクトは焦った。今、この男は言ってはいけないことを言った。しかも、子供をあやすよう頭に…。
案の定ハナブサはプルプルと震え顔は鬼のよう。

『てめぇ!喧嘩売ってんのか!?私は坊主じゃないわ!一応女なんだけど!』
「(一応…)」

全員が同じ事を心の中で呟いた。

「おぉ、こりゃ、悪かったねぃ。お嬢ちゃん。パパとママはどこだい?」
『オジョウチャン、パパトママ…』
「こう見えて彼女はもうお嬢ちゃんと呼ばれるような歳ではないです。あまり言い過ぎると殺されますよ」
『一言余計だわ!』

無表情のままタクトはすみませんと言った。
暫くの間、男とハナブサの言い争いが続いたがそれを終わらせたのはこの船の船長、白ひげことエドワード・ニューゲートだ。

「なにを騒いでんだ」
「親父!」
『あんたが親玉か!躾がなってないぞ!!』

白ひげはその言葉に覇気を飛ばした。タクトは一瞬意識が飛びかけだが辛うじて保っている。ハナブサは顔色一つ変えずに白ひげをじっと見た。

「ほぉ、面白ぇ餓鬼だな」
『が、餓鬼じゃねぇ!』

ハナブサはまたプンスカ怒り始めた。白ひげはグラララと笑い割れ物を扱うように撫でた。

「お前、俺の船に乗らねぇか?」
『ふっふっふっ。断る!』
「断るんですか…笑い方がとても不気味で怖いです」
『白ひげ、私は海賊なんかにならんぞ!自由人だからな!』
「あ、無視ですか」

いつも人の話を聞かないハナブサに慣れてしまっているのか平然としている。
白ひげはまたグラララと笑った。

「おチビさん、船の件は悪かったよい。名乗り遅れたが、俺はこの船の1番隊隊長のマルコだい。よろしくねい」
『チビって言うな!私にはハナブサって名前があるんだよ!』
「俺はタクトです。どうぞ、よろしく」
「グラララ、お前がハナブサか。噂は聞いてるぜ」

新聞の事だろうか。他に思い当たる節がない。と、言っても自分の名前は新聞に出ていないし顔も出ていない。何故、この男は自分の事を?
ハナブサはそう疑問に思いながらも白ひげと握手を交わした。



「ねぇ、白ひげのおじ様。あたしね、子供が出来たの。」
「あいつの子供か?」
「えぇ、そうよ。浮気ばっかするけど愛してるの」
「そうか…」
「もしも」
「あ?」
「もしも、私に何かあったらお願いできます?」
「グラララ。任せとけ」

20年ほど前の記憶


「俺は、あの約束を一度も忘れたことなんてねぇよ…なぁ、リアン。やっと出会ったぞ」



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