06
真っ白な天井、鼻にかかる薬品の香り。目頭からぽつりと涙が零れた。
あれから、数日経った。サスケは以前の様な笑みを浮かべる事は一切なく、ただ一心に修行を続けていた。
『サスケ…』
「イヅキか…」
サスケは振り向くことなくぽつりと呟いた。サスケの周りに見える無数の闇。ごしごしと目を擦っても消えない。不思議に思った私はサスケを後ろから抱きしめた。
「なっ!いきなりなんだ!」
『サスケが…消えちゃうんじゃないかって心配になって…』
兄さんみたいにと言う前にサスケに腕を剥がされた。
「俺はどこにも行かない。ずっとお前の傍に居る」
サスケは私を正面からキツく、壊れ物を扱うように抱きしめた。その温もりに私は瞼を落としサスケの背中に腕を回した。
それからしばらく経ってから、家に帰ろうとサスケが言い、歩き出した。
家に着くとすぐに夕飯の支度を始めた。大根とわかめの味噌汁、ぶりの照り焼き、ほうれん草のおひたし、冷やしトマト。母さんに料理を教わっておいて良かった。
サスケと向かい合うように座り手を合わせ目の前のものにありついた。
半分ぐらいありついた時だった。サスケが箸を止めたのが分かった。
俯いたまま何も言わないその姿に小首を傾げた。
『どうしたの?サスケ?』
「…イヅキは、兄さ、あいつの事どう思ってる?」
私はその問いに答えられず、唯唯、視線を落とすだけだった。
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