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幸せだった。
家族がいて、大切な人がいて、友人がいて。
あの日、もしも私が違う道を選んでいたら運命は変わっていただろうか。



ある夏のことだった。
蝉が鳴き、太陽はジリジリと肌を刺す。
大学を卒業し大手企業に就職した私は忙しい毎日を送っていた。
今日も遅刻しまいと横断歩道を渡っていたんだ。
いつもと同じのはずなのに。


体に走る痛み。浮遊する体。そして、叩きつけられ体は軋む。
最後に見たのは、横断歩道の点滅と見知らぬ綺麗な少年の悲しい横顔だった。





眩しい光が瞼を刺激する。
ゆっくりと瞳を開けると、自分の顔を覗き優しく髪をとく少年がいた。

「あぁ、すまない。起こしてしまった」

驚きのあまり声が出ない。目の前にいるのは昔から大好きだった漫画に出てきたうちはイタチ。優しそうに目を細めるその姿に釘付けになってしまった。

「どうかしたのか?」
『ううん!何でもないよ』
「…そうか。ほら、早く着替えないとアカデミーに遅刻するぞ」

その言葉にまた驚いた。視線を落とし自分の手のひらを見て驚愕した。
小さな手。どうみても20歳半ばの女の手ではない。
そして私は確信した。

『(これが世に云う転生トリップ!)』






 

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