loneliness 5/5



国立シヴィラ図書館を騒がせた殺人事件も解決し館長
が変わった後ほとんどの司書の仕事をやめていった
国会シヴィラ図書館は司書の数を極力減らし受け付け
以外は無人図書館になる。

かく言う私も図書館をやめた一人だったもう次の
仕事は決まっている今の借りているマンションでは
職場からは遠いので引っ越しの準備も進めていた
今日の午後にも引っ越し業者がきてこの部屋とは
別れをつげることになっている

「ご主人様、お客様です」

立体ホログラム表示サポート人工知能・
ホームセクレタリー・アバターユニットシステム
のあまみやちゃんが教えてくれた
運送屋以外に私を訪ねる人なんていただろうか

「公安局の宜野座さんともう一人は誰でしょう」

そう悩むあまみやちゃんの頭を撫で玄関に向かった

「こんにちは宜野座さんどうしましたか?」

「いや、狡噛がどうしても
真相を確かめたいと言いだして」

どうやら仕方なくきたということらしい
とりあえず部屋に招いてソファーに座らせた

「あんたが苗字 名前か」

「はい苗字ですけど」

あんたとは失礼だがこの人が同僚が言ってた
とんでもなく運動神経のある執行官だろう

「俺は狡噛 慎也だこれから聞くことは別にお前を
どうこうしたい訳じゃない」

捜査令状もなくあくまで真相を確かめたい
というのが本音なのだろう

「殺人事件で捜査はうやむやになったが
最初に本を燃やした犯人はあんただろう?」

「狡噛っ・・・何を・・・」

「確証があって言っているのですか?」

「あぁ間違いない」

ああ、狡噛と言ったかうやむやになってたものから
私に辿りつくとは相当な男だ証拠などほとんど
なかったのだしかし証拠が0とはありえない
何て言ったってあそこはシヴィラの檻
国立シヴィラ図書館なのだから

「そうですね燃やしたのは私です」

「ふん、ギノ俺が言ってたことは
確かだっただろう」

宜野座さんは何故どうしてという顔をしていた

「あの本は元々私の本だったんですよしかし本を
盗まれてしまって探していたら普通に自分が
働いている図書館のアーカイブであの本を
見つけたんです装丁も内容も特徴的でしたからね
一見高そうな本なので盗んだんでしょう」

「他の本とは思わなかったのか?」

「あれはこの世界で1冊しかないと聞きました
盗んだのは後から思えば館長と殺された司書
だったんだと思います」

高橋君もきっと何か大切な者を盗まれたのだろう
しかし証拠もなければ取り返すことも不可能だ
取り返せないのならいっそと思ったのだろうか
亡くなっている彼の意思などもう誰にもわからない

「聞いた?あの本は貰い物だったのか?しかし
自分のもので猶更貰い物なら何故燃やしたんだ?」

「くれた人と望むものがあれば
燃やす約束をしていたんです」

訳がわからないという顔を二人がした

「そうですねあれは
運命を革命できる本だったんです」

「運命を革命できるって・・・」

「願った事が叶う本とくれた彼は言ってたんです
2度は使えないからそれでもまだ叶えたい事が
あるのなら燃やしなさいって」

「お前はその時何かを願ったのか?
そしてまだ何かを望むのか?」

「ええ私は運や選択ミスに左右されない
最適で幸福な人生を送りたいと願いました
そして人は望み続ける生き物ですよ狡噛さん」

海外から移住し準日本人となってすぐの頃
理不尽なことを沢山味わったとにかく幸せになるため
に日本に来たというのに閉鎖的なこの国では結局
私の様な外国人は受け入れてもらえなかったのだ
入国の際にのみ職業訓練校に入校できるということも
私は入国の際知らされておらず結局のところ路頭に
迷うことになってしまったのだった
勿論、自国で汚い仕事をこなしていた私は
その場にすぐ慣れたのだけれども・・・


そこで出会ったのがあの燃やした本だ
「運命を革命できる本」
そういって私に本を渡してきた人の名は

「君がその本を燃やした頃にまた会いに来るって・・・
そう彼は・・・たしかマキシマと名乗ってましたね」

その瞬間二人は突然動揺した

「マキシマだと・・・」

あの綺麗な男は目の前の狡噛を激情させるほどの
“何か”をやらかしたようだ

「ご主人様、エリアストレスが急上昇中です」

「おい、落ち着け狡噛聞くことがあるんだろう」

焦ったように宜野座さんが狡噛さんをたしなめる

「そうだったなまさか先にマキシマの
名前が出るとは思わなかったからな」

あまみやちゃんのエリアストレス降下中ーという
言葉に苦笑しつつ狡噛が何を聞きたいのか
分からないがとりあえず顔色を窺った

「この写真の男に見覚えがあるな?」

1つのぼやけた写真を見せられたこれはシヴィラ
図書館の閉架マキシマはあの図書館にも来ていたのか

「この日本に白髪男性なんて中々居るものではない
ですから、彼が私の世界を革命してくれたマキシマ
で間違いないと思います。本を燃やしてもまだ会い
には来てくれていませんが」

「本当に接触していないんだな?」

念入りに確かめるように聞かれる圧迫面接官も
驚くような極悪非道な顔だ

「ええ、そんなへまする人じゃないですよ」

どうやらマキシマは追われるのを楽しんで
いるんだと思う彼は勘も頭も良いので自分が追われて
いることは既に分かっているだろうただまだ遊べる
玩具かどうか見極めていると言ったところなのだろう
そんなこと目の前の狡噛に言ったら怒られてしまう
ということは分かっているので今はそっと口をとじた

「そうか、マキシマがまだこの国に居ることが
分かっただけ収穫だろう填島が接触してくることが
あれば連絡が欲しい苗字、お前にとっては
神様かも知れないが俺たちにとっては
許せるような奴じゃない」

宜野座と狡噛は引っ越し業者が来るまで
マキシマについて根掘り葉掘り聞いた後
礼を述べて去って行った

引っ越し業者に挨拶をしトラックに荷物
が運ばれていく様子を見ながら漠然と考える

何故マキシマは自分を助けたのだろうか気まぐれな
善意に助けられたのは確かだが、路頭に迷っていた
私を職業訓練校に突っ込んでくれたのは
まぎれもなく彼なのだ

世界を革命する本なんてものは元々効力なんて
ないことは勿論知っていた希望を叶えられるものは
人間しか居ない狡噛は私にとってマキシマは神様かも
しれないと言ったがそれは違う私にとってマキシマは
ただの気まぐれな人間でしかなかった

「苗字さん荷物の詰め込みが終わりました
行先は・・・」

「お疲れ様です。行先は私立桜霜学園、
教職員宿舎でお願いします」

次の仕事はもう決まっていた桜霜学園の図書館司書
どんな状況でも色相が濁らないというデータから
私立桜霜学園の司書に私は選抜されたのだ
全寮制女子学校という教育方針貞淑さと気品失われた
伝統の美徳それが桜霜学園がかかげる教育の理念
時代錯誤ではあるがそれ故に希少価値がある
何物にも染められない者ほど好ましい

私は何物にも染まらないし染められない
誰も私を変えることはできないし
変わるべきだとも思っていない

ただもういちど同じである彼に会ってみたかった
ただ私が唯一この国で約束をした男マキシマ
本を燃やしたら僕から君に会いに行くその言葉は
嘘ではないとどこかで確信している
きっと彼に近々会うことになるだろうそう思いながら
トラックの助手席からノナタワーを見上げた




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