運命の帝王 10/16





血が流れる。

「うっ…」

スティーブが苦しそうな声を出した
それでも私はスティーブから
ナイフを抜かなかった
このまま抜いてしまえばスティーブは死ぬ
でもまだ死なせる訳には行かない

その瞬間タイニーが嬉々とした顔で近付いてきた

「おぉ、なんという情熱!なんという勇気!」

何か色々タイニーが言ってたけど
私はほとんど聞く気が無かった
だって一番悪いのは…
この人だから
一通り全ての全貌を話したタイニーは
怖い位笑顔だった
反面スティーブは絶望的な顔をしている


「…私はそんな事全部知ってました」

「…何だと?!」

タイニーから笑顔が消えた

「私は…全て知ってた
知った上で今まで運命を変えてきた
私は今まで偶然運命を変えたわけじゃない
私が変えようと思ったから変えてきたんです」

皆に生きて欲しかった
只生きて欲しかった

「私の心の父は貴方じゃないんです」

死ぬ前の日本に居た父さんが
私の心の父さんなんだから…

「だからこの運命も
私が捻じ曲げるんです」

私はスティーブをまっすぐ見て
スティーブにナイフを持たせた

「…いいだろうどうせ
俺も最後だ、心中と行こうぜ」

私ももう一本ナイフを取り出して
タイニーが止めに入る前に
同じタイミングで刺した…

つもりだった

「…カーダ何で…」

私の胸とカーダの胸に刺さった剣そして
スティーブの剣はカーダに刺さった

「ラナ…ごめんでもこれが
俺のやりたい事だから…
誰だってラナを殺す事は許さない
誰かに殺される位だったら…
俺が手を下す、誰ひとり触る事は許さない…
反対に俺もラナに殺されたかった
ラナが居ない世界では生きていけないから…」

カーダの愛は狂気を含んだ
愛だったかもしれない
それでも私も狂気を含んでいる

「私も…本音を言ったら
カーダに殺されたかったのかもしれない
ありがとう…カーダ私は幸せだったよ」

「俺もだ…」

だめだもう力が入らない…
でも最後の力を振り絞って
スティーブも巻き込むように

川に落ちた

川に落ちた瞬間スティーブに刺さっていた
ナイフをカーダに抱きしめられたまま抜いた
その時見たスティーブの顔は
何故かほんのり笑顔で
私達よりも先に川底に沈んで行った

その後を追うように
カーダも私も抱きしめ合ったまま
私もカーダも笑顔で沈んで行った



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